視線恐怖症
誰かがこっちを見ていると思うと、呼吸が乱れてしまう。
一瞬でも目が合ってしまうと、気分が悪くなる。
何でみんな長時間、人の目を見ていられるのかが、分からない。
目を見なくても、声色や身体の揺れなどで、相手は感じられる。
自分がサングラスをしても、変わらない。
いくら自分がしても、相手が見てくれば、目が合ってしまう。
相手がサングラスをしてくれれば、なんとか和らぐ。
相手の黒目が、サングラスの黒に紛れてくれるから。
でも、目線が苦手ということは、話しかけることも苦手だ。
だから、サングラスを誰かに掛けさせることは、不可能だ。
ただ、異性の友達はひとりいる。
その人はいつも、こちらを見ずに、ずっとスマホを見ながら話してくる。
それなのに、しっかりと会話のキャッチボールをすることが出来て、こっちの気持ちも分かってくれる。
異性の友達と、二人で観覧車に乗った。
スマホを見ながら喋って、頂上に着いたとき、こちらに背を向けながら、付き合わない?と言われた。
うん、と答えると、観覧車を囲んでいるガラス上で、ガチンと目が合った。