新世界に来ました!
「おお?ここはどこだろう…」
ガブリエルに質問する間も無く使われた転生魔法によって新たな世界に降り立ったボクは、当たり前だけどどこなのかもよくわからないような場所にいた。でもよく見ると不思議なことがあった。
「あれ?なんで文字読めるんだ?……っていうかこれ日本語じゃないかな」
自分が知っている、使い慣れている言語がこの世界でも使われている事に安堵したボクだったけど、どちらにしてもどこがどこだかわからないので八方塞がりになっていた。すると、前方からボクのところに向かってものすごい勢いでやってくる物体…?がいた。
「魔王様ですよね!お待ちしていました!!ワタシ、筆頭眷族のヴァルキリー、名をジャンヌと申します!」
「ちょ、ちょっと待ってもらってもいいかな?状況が全然掴めなくって」
「あ、そうですよね!!魔王様は今こちらに来たばかりですもんね」
「そんなこともわかるの?」
「魔王様の魔力は絶大ですので、いきなり現れたら皆気付くと思いますよ?」
「そ、そうなんだ。じゃあ他の魔王とかにも気付かれてるってこと?」
「その可能性は低いかと。この辺りは憤怒の魔王の領地ですので、いくら先代が倒されたといえど他の魔王も容易に立ち入れる所ではございませんから」
「え?ここってそんな所なの?」
「といいますか、先代憤怒の魔王、エレノア・サターニャ様が強過ぎたのです。倒された際も闇討ちの上魔王3人がかりで倒されたとのことでしたので…」
「え?なにそれ強過ぎじゃない?」
ボクは想像していたよりも遥かに強かったエレノアに驚きながら話を聞き続けた。
「でもエレノアさん?が倒されてからよく持ち堪えてるね」
「それもエレノア様のおかげなんです。エレノア様が最後に解放した権能、憤怒の能力によってサターニャ領に踏み込んだ敵性持ちの者は例外なくその能力を半減させられているのです。それもあって他の魔王がこの領域に立ち入ることもなく、私達はなんとか生き延びることができています」
「そうだったんだ。でもなんだか憤怒の魔王なのに怒ってるイメージがわかないね」
「エレノア様は他人に対して怒るようなことは無かったのです。実際、不意打ちで魔王が攻めてきた際にも話し合おうとしておられました。ですが、領民が無惨にも殺されてしまったことでその能力を解放されたのです」
「そうだったんだ…」
「はい、それがエレノア様の最初で最後の権能解放でした。その力は凄まじく、攻めてきた強欲、嫉妬、暴食の三魔王は向こう数年は行動不能レベルにまで追いやられました」
「そんな威力があるんだ」
「そしてエレノア様は最後にワタシにこう告げられたのです。『そう遠くない未来に、私の子が現れる。その時はまた、その子を助けてあげて』と」
「子?」
「それについてはワタシも詳しいことは何も教えられていないので…」
「そっか」
「はい。申し訳ございません」
「そんな、ジャンヌさんが謝ることじゃないよ!ところでなんだけど、ボク、これからどうすればいいかな?」
「ひとまずは、エレノア様の居城でもありました『白金の麗城』へとご案内します」
「お、お願いします」
ボクは、そのままジャンヌさんに連れられて、先代魔王のエレノアさんの居城だった場所へと向かいました。




