異世界新種調査隊。上
――初めに。これは、ある世界的な科学者であり、転生者でもある“スゴイ・バカ教授”が残した、偉大なる手記をもとにしたレポートである。
彼の前世の名前は“マサル・サトウ”であるが、そこはどうでもいい。
この私、“名探偵フシアナ”は、何故、バカ教授が突然消息を絶ったのか、それを探るべく、研究チームを率いてバカ教授の隠れ家へと調査に来ていた。
そして、隠れ家の一番奥、格子に囲まれた仄暗い部屋で見付けた手記を調べると、バカ教授に関する不可解な点がいくつも浮かび上がってきたのだ。
では、その不可解な点を順に、紐解いていこうと思う。
◇ ◇ ◇
『バカの手記 ――神性歴2020年 一の月』
……我は、スゴイ・バカ教授である。
国家の頭脳たる我が、ある“SSS級の新種に変化したホブ・ゴブリン”の噂を聞き付けて、遠路遥々この地へ訪れたものの、成果を上げられずに早二月が過ぎてしまった。
調査が難航している理由は主に二点。
一つは、現場が迷宮のように複雑な“ゴブリン坑道”であること。もう一つは、百キロ圏内でも女ばかりの小さな村が1つあるだけで、補給困難であることが挙げられる。
◇ ◇ ◇
――これは、バカ教授の消息を掴む為の重要な手掛かりとなるに違いない。
同行しているチームメンバーの一人、国家特級心理捜査官のアリス女史も間違いないと頷いている。実に頼もしい限りだ。
だが、問題は次のページなのだ。