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学校生活

いつものように教室に着いた。

最近は、良平が生徒会の仕事で早く出るから、学校に着く時間も早くなる。

そういや、良平の靴箱に今日も入りきれないほどのラブレターが入っていたな。

なんか、ちょっとムカムカしてきた。

教室には親友である日野孝子がいる。

「孝子」

私の呼ぶ声に振り向いた孝子は

「毎日、お熱いわね。生徒会長と」

茶化すように言う孝子。

ムッとしながらも

「良平とは、何ともないわよ」

そう言いながら、言い知れない棘が胸にチクリと突き刺さる。

「私は、文彦さんと結婚するんだから」

夢見る少女のようにしている私に対して、孝子は不機嫌そうに

「またアイツの話?」

そう…孝子は、文彦さんの話になると途端に不機嫌になる。

理由を尋ねても

『ああいうタイプが嫌いなだけよ』

不機嫌に答えた孝子。

もしかして…文彦さんの事…とか考えた事もあったんだけど、違うのは分かっている。

すごく、毛嫌いしているのは分かっている。

どうしてかな?

あんなにいい人なのに…

「瑛梨香は、会長の方がお似合いなのにな…」

孝子は、時々そう呟く。

ごめん、良平は恋愛対象外だわ。

ケンカ…最近してないけど、友達って感じだし。

それに、私には文彦さんがいるしね。

良平は、将来の義弟。

だから、仲良くしていきたい。

将来、文彦さんと結婚して、お義父様とお義母様、それに文彦さんと良平と、お茶をしながら団欒をしてみたいから。

それが今の所の私の夢。

「何を自分に陶酔しているの?」

そう私の顔を覗きながら言うのは、これまた親友の高坂陽菜。

「べ、べつに…」

私が狼狽していると

「また、婚約者の事でも考えていたんだ」

陽菜は、呆れながら言う。

陽菜も文彦さんを嫌っている…孝子ほどじゃないけど。

どうして、二人とも嫌っているのか教えてくれない。

教えてくれたっていいのにさ。

「どうでもいいけど、婚約者の話題はあまり出さないでね」

陽菜が念を押すように言う。

わかりましたよ。

いいませんよーだ!!

心の中で、軽くべーと舌を出す。

でもね、実を言うと、何か違和感があるんだ。

上手くいえないんだけど…

何がおかしいのかわからない。

でも、屋敷を出る時も、お邪魔する時も…

私の気のせいよ…きっと

そう言いきかせる。

「そういやさ、メイド喫茶の衣装、ラフで見せてもらったけど、結構際どかったわ」

陽菜の言葉に

「「ええ!?」」

私と孝子は、驚きの声を上げる。

「フリル…までは、まぁ理解出来るけど、丈がどうも短いのよ」

陽菜が、声を潜めて言う。

「誰が、そんなデザインしたの?男子?」

私の問いに、陽菜は首を横に振って

「いや、藤宮さんだよ」

そう答える。

え?藤宮さんって、あの…

普段見せる地味な彼女の姿を思い浮かべる。

クラスであまり目立たないクラスメイトの事を。

そして、チラリと、その方角を見る。

いつものように本に目を落としている目立たないクラスメイト。

「何で彼女のデザインが採用されたの?」

もっともらしい疑問を孝子が口にする。

「うん…どうも、彼女がラフで書いていたデザインを男子が見つけてね。それで、あれよあれよのうちに決まったらしいわ」

陽菜が、息を吐いた。

それが、どれだけ際どいデザインかどうかを物語っている。

「私、接客係だよ…」

私がボヤくと

「ご愁傷様」

運よく裏方にあたった親友二人が私の肩に手を置いた。

「で、でも、まだデザイン変更可能だよね?」

私がそう言うと

「いや、もう本決まり。男子の強い要望で…」

陽菜は、私を地獄へとたたき落とした。

なんですとぉぉぉぉ!!!

フラフラしながら立ち上がり

「とりあえず、今デザイン誰が持っているの?」

見せてもらわないと…

「委員長と書いた本人」

私は、さくさくと藤宮さんの席に向かう。

委員長が見当たらない以上、彼女に聞かないと…

藤宮桃花さん。

いつも本を読んでいる大人しい人。

「藤宮さん」

私が声をかけると、藤宮さんはビクッとして

「な、なんでしょうか?」

消え入りそうな声で返事した。

「あの…例のメイド服のデザイン画…」

私の用件を理解したのか

「あ…ごめんなさい」

そう言いながら、恐る恐るデザイン画を出す。

確かに…陽菜の言う通り際どい。

でも、それ以上に可愛かった。

「あの…澤部さん、接客係ですよね?ごめんなさい」

素直な彼女に、私は素直に可愛いと思った。

「いいよ、可愛いから。それより、藤宮さんって絵がうまいんだね?」

笑顔で私が言うと、藤宮さんはホッとした表情になり

「いえ…自慢できるほどじゃ…」

そう言って俯く。

「すごく上手だよ。自信持っていいと思う」

言った後にデザイン画を彼女に返した。

「ありがとうございます」

控え目な彼女が、ますます可愛く感じた。

彼女を離れて、孝子と陽菜が待つ席へと戻る。

「どうだった?」

孝子の質問に

「際どいとこあったけど、それ以上に可愛かった」

私が感じた事を素直に言うと

「ふぅん…」

孝子は、少し意外そうな顔をしていた。

「何よ?」

私が、首を傾げると

「いや、際どいって聞いていたから、てっきり抵抗するかと…」

孝子の言葉に、ムッとしながらも

「可愛いから許す…それより…藤宮さんって可愛い子だなぁ」

チラリと藤宮さんを見る。

先程と変わらない。

黙って、本に目を落としている。

「藤宮さん?…まぁ、大人しい性格って聞いているけど…」

陽菜が言葉を濁している。

「けど?」

「大人しい人ほど、本当は…ってのは、よくある事だしね」

陽菜の言葉に、私は

「そんなことないって」

と、笑い飛ばす。

二人は、溜息をついて

「瑛梨香は、人を見る目がダメダメだからなぁ」

孝子が呟いた。

これには、私も、少しカッチーンときた。

「何でそんな事言うのよー?」

口を尖らせて言うと

「瑛梨香は、何も知らなすぎるって事よ」

陽菜が事よ。

意味、分からない。

意味がわからないよ。

何で、二人ともそんな事言うかなぁ?


“二人の言葉は真実だった。”


その意味を後で知る事になるなんて、この時の私は思いもしなかった。


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