屋敷にて―良平サイド―
疲れて屋敷に戻る俺。
本当に疲れた。
何でって決まっている。
文化祭のごたごた…文彦の分も含めて、後始末とかいろいろあってヘトヘトな所に
『一緒にダンスしませんか?』
顔を赤らめて言ってくる女子が後を立たなかった。
『ごめんなさい』
俺が答えると
『思い出にしたいから』
なんて、食い下がってくる奴もいる。
俺は、好きな女…瑛梨香以外と踊るわけないだろ?
それらを上手くあしらって、生徒会長としての最後の仕事を済ませてから、俺は屋敷に戻る。
屋敷は、騒然としていた。
当たり前だよな…
次期当主…跡取り息子が警察に捕まっているんだからな。
居間の方から
『文彦さんは無実です!!何としても釈放させなさい!!いくら積んでも構いません!!』
ヒステリックなあの女の声が響き渡っている。
大事な息子だからな。
俺は、気付かれないように自分の部屋に向かう。
はぁ…疲れた。
ベッドに横たわり、天井を見つめて息を吐く。
これで、俺の生徒会長としての仕事も最後…いや、まだ生徒会役員選挙がある。
それが終わるまでは、頑張らないとな。
一応、こんな屋根裏にもシャワールームがある。
一緒の風呂に入りたくないから、あの女が突貫工事よろしく作らせたんだが…
夏はいいけど、冬はな…寒くてしょうがない。
今の時期は…風呂上がりは寒くて仕方ない。
仕方ないか…風呂に入って寝るしかない。
一般生徒は、明日は休みだけど、俺はゴミの処理の為、登校しないとならない。
さて、風呂にでも…
そう思った瞬間、ドアが開いて階段を上る音。
『奥様!!』
メイドの声が聞こえる。
やってくるのは、あの女か…
どうせ、文彦が捕まったから、俺に八つ当たりに来るんだろうけど
だが、今日の様子は違う。
明らかに殺意を持っている。
手には、いつもとは違う棒が握られている。
「よくも…」
怒気を含んでいるくぐもった声。
「よくも、私の文彦さんをぉぉ!!!」
そう言ってから、殴りかかってくる。
さっと受け身に入った。
いってぇ!!
力任せに殴りに来ているから痛い。
「お前のせいで!!お前のせいで!!」
そう言いながら、何度も殴ってくる。
「奥様!おやめください」
制止しようをする諏訪の声がする。
「止めるんじゃない!!こいつだけは!!こいつだけは!!」
そう言って、何度も殴っているうちに、一発頭に当たる。
流れ出す血。
「良平様!」
慌てる諏訪。
俺の血を見て、我に返ったのか、しばらく動かないあの女。
「…勝手に暴れて怪我をしたのよ、そうよ…こいつが勝手に暴れて!!」
そう言ってから棒を放り出す。
「屋敷の全員に、そう伝えなさい。諏訪」
諏訪に、そう命じる。
「私を裏切る事は、許されませんよ。そして、こいつは放っておきなさい。その内死ぬでしょ」
そう言い残すと、階段を下っていく。
流れ出す血。
諏訪は、渋い顔をしてからスマホを取り出して
「救急ですか?怪我人がいます。殴られて頭から血が…はい…住所は…」
諏訪の声を遠くに聞きながら、俺は意識を失っていった。
瑛梨香…最後でいいから…
お前に会いたかったよ…




