見えてきた真実 2
そこに
「瑛梨香さん!!」
慌てた様子の祥子さんがやってきた。
「瑛梨香さん、こちらに…」
そういう祥子さんは、いつもと違う。
修羅のような顔で、良平を睨んでいる。
「まさか、嘘八百を瑛梨香さんに、吹き込んでませんよね?」
確認するように言う。
「俺は、真実を述べただけです」
良平が、凛として答える。
熱があるというのに…
「瑛梨香さん、良平さんの言葉を信じてはいけませんよ」
私に優しく言う。
「祥子さん…」
「良平は、私と文彦を羨んでいるだけなの。私が本妻で、文彦さんが本妻の子供だからって嫉妬している…それだけなのよ」
優しい口調だが、どこか押しつけがましい。
「さ、こちらへ。ここは、あなたに悪い空気が漂っているわ」
そう言って私の肩を抱く。
私は、されるがまま階段を下っていく。
空気が悪い?
だったら、どうして良平を、こんな部屋に閉じ込めておくの?
熱が出ているのに、こんな寒い部屋に。
あの痣は何?
どうして、あんな痣がついているの?
祥子さんに聞きたいけど聞けない。
聞くのを許さない…そんな空気が漂っている。
階段を降りてドアの外に出ると諏訪さんが控えてきた。
「諏訪…後で話があります」
祥子さんは、怒りを抑えているようだ。
「…わかりました」
諏訪さんは、黙ってそれに従う。
訳も分からないまま、居間へ連れて行かれる。
「瑛梨香さん、良平さんをあの部屋に置いているのは、あの子がそう望んだからなのよ」
と、勝手に話を始める。
「自分は愛人の子供だからと、卑屈になって…それであの部屋にいるのよ」
言い訳がましい。
「あの痣だって、良平が暴れてそれで勝手についてしまったの」
そう言ってから
「それを私や文彦さんのせいにしているだけなの。私達を信じて…ね?」
祥子さんの眼差しに頷く。
そうよ…祥子さんが…文彦さんが…
でも…良平…良平が嘘をついているとは思えない。
どちらを信じていいのか分からないまま私は家に帰された。
家に帰ると
「お母さん…」
台所に立っているお母さんに声をかける。
「お母さんは、良平が愛人の子供だって知っていたの?」
私の問いに、お母さんは驚いていたけど黙って頷いた。
「どうして、教えてくれなかったの?」
「言っても、瑛梨香を傷つけるだけだって思ったからよ」
そう言われては、何も言えない。
「どうして…」
涙が零れていく。
何を信じていいのか分からない。
何を信じていいのか…分からない。
泣いている私をお母さんは抱きしめた。
「瑛梨香、ごめんなさいね」
そう言われても…私には…
分からないよ。
「ねぇ、お母さん、祥子さんが良平に…」
私の問いに、お母さんは首を横に振って
「それは分からないわ。あの家の事はよく分からないから」
お母さんは、知っているんだ。
良平が…傷を負っている事。
でも、私を傷つけまいとして…
そう思うと涙が止まらない。
私の事を思って黙ったいるんだって分かるから。
ねぇ良平
私…
こんなに守られていたんだね…
なのに…私は…
祥子さんの言葉に頷いてしまった…
そんな自分が…
すごく嫌になった…




