見えてきた真実 1
「ちょっと、早く帰るね」
そう言い残して、私は教室を後にする。
「はいはい、会長によろしくね」
孝子が手を振りながら言う。
良平の所に行くのが分かっているみたい。
「いってきます」
と、急いで学校を出る。
早足で、大野家の屋敷を目指して歩いてく私。
だけど…
「申し訳ありませんが…」
メイドさんから玄関払いされてしまった。
「でも…」
「もし、瑛梨香様に風邪が移ったら大変ですので」
メイドさんが無表情で言う。
何か…おかしい…
「祥子さんは?」
私の問いにメイドさんは、無表情のまま
「奥様は、現在、病院の婦人会の会合に出られています」
棒読みのように答えた。
「良平が熱を出しているのに?」
母親なら、そばについてあげないとならないだろうが…
「ですが、奥様は大野総合病院の院長夫人ですから」
メイドさんから感情は感じられない。
「とにかく、良平に会わせてください」
私の訴えにメイドさんは、動じもせず
「いいえ、奥様の許可がございませんと…中にお入れする事はできません」
淡々とした口調で答えた。
「でも…!」
私が何か言いかけると
「どうぞ、お入りください」
執事の諏訪さんがメイドさんの後ろから言う。
「諏訪さん!そんな事をしたら…」
今まで無表情だったメイドさんが動揺している。
「私が責任を取ります。中へどうぞ…」
諏訪さんの言葉に、メイドさんは困惑の表情を浮かべながらも道を譲ってくれた。
何度かおじゃました事あるけど、やっぱり広いお屋敷だな。
良平は、今頃ふかふかのベッドで、ちゃんと横になっているだろうか?
せっかく寝ている所をお邪魔して大丈夫かしら?
なんて、今更な事を考えていた。
だけど、2階に上がり進んで行くうちに…
あれ…?と思う。
豪奢なドアがいくつも並んでいるのに、諏訪さんはどれにも立ち止まらない。
やがて、一番奥の物置らしきドアを開いた。
「どうぞ…」
諏訪さんの言葉に驚く。
ドアの向こうには、今にも壊れそうな階段が続いている。
「諏訪さん…?」
「良平様は、この向こうです」
静かに告げる諏訪さん。
いろいろな疑問が頭をよぎったが、とりあえず階段を上がる事にする。
階段を上がって驚いた。
何…ここ…
今にも壊れそうな家具やベッド。
そのベットの上で良平は眠っていた。
人の気配に気づいたのか
「諏訪…?何か…?」
そう言って起き上がり、私を見て
「瑛梨香…?」
と驚く。
「良平…これ…どういう事?」
意味が分からない。
目の前のテーブルに乗っているのは、残飯みたいな食事。
手をつけていない。
どういう事?
ねぇ、どういう事?
私の疑問が、ぐるぐると回り続ける。
「なんで…ここに…?俺、幻でも見ているのか?」
戸惑っている様子の良平。
「ねぇ、どういう事?何で、良平が…こんな…」
熱があるというのに、良平に縋りつくかのように問いかける。
今、気付いたけど、ここは寒い。
外と同じくらいに…
こんな場所で寝泊まりしていたら、風邪をひいて当然だ。
良平は、私から目を逸らして
「俺が愛人の息子だからだよ」
そう告げた。
愛人の…息子…?
良平のお母さんは、祥子さんじゃないの?
「俺の本当の母親が亡くなって、ここに引き取られた」
それが小学4年生の頃だったのだと、悟る。
転校してきた時に話していた、家庭の事情って…
そういう事だったの?
「俺は、屋敷に来た時から、ここに住んでいる。食べ物だって、ほら」
そう言って、残飯みたいなご飯を指差す。
「あんなものしか与えられていない」
静かに言う。
「どうして?どうして?」
私には意味が分からない。
縋りついた私。
苦痛の顔を浮かべる良平。
慌てて良平のパジャマの袖をまくる。
そこには、青痣が棒の形でくっきりと残っていた。
「これって…誰が…?」
答えの分かっている事を聞く。
「あの女だよ」
それが祥子さんを指しているのは、容易に理解できる。
「俺が、愛人の子供だからって、ずっと分からないように殴り続けてきた」
良平の言葉が信じられない。
「文彦も…」
その言葉は、さらに信じられなかった。
「そんな!文彦さんは…!!」
もう頭が混乱していて分からない。
あの優しくて穏やかな祥子さんが…
紳士的で、優しい文彦さんが…
良平にこんな事をするなんて…
「嘘よ…こんな」
頭は、ぐるぐるして訳が分からない。
何が真実で、何が嘘なのか…
分からない。
「お前には、いつか言わないとって思っていた。アイツ等の本性を」
「もうやめて!!」
私は思わず叫んでしまう。
「分からないよ…何を信じていいのか分らないよ」
混乱している頭。




