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何も知らない瑛梨香ー堪える良平

次の日―

「え?良平、休みなんですか?」

私が確認するように聞くと、祥子さんは

「ええ…ちょっとね」

心配そうに言う。

お母さんだもんね。

当り前か。

「そう言う訳だから、瑛梨香さんは学校に行ってね」

にこやかに笑う祥子さん。

「あの…」

私は、話を切り出す。

「昨日は、ありがとうございました」

そう言って頭を下げる。

目を丸くしている祥子さん。

「何の事?」

驚いているようだ。

「えっと…昨日、襲われそうになった所を助けてもらったんですけど」

そう話すと、祥子さんの表情が変わる。

一瞬、顔を顰めたが

「あら、そうなの?良平さんったら、何も言わないから…」

いつものにこやかな祥子さんだ。

「近いうちに、両親と一緒にお礼に伺いますから」

そう言うと、

「いいのよ、気にしないで」

祥子さんは言う。

「未来のお姉さんなんだから、文彦さんの代わりに瑛梨香さんを守るのは当然だわ」

そう言ってから

「早く、学校に行きなさいな」

と、私を送り出す。

私は背を向けて気付いていなかった。

祥子さんが修羅のような表情になっていた事に…

私は、また良平を…追い詰めてしまう事をしていた事に…

気付いていなかった。




【バンっ!!!】

派手な音を立ててドアが開く。

そして、音を立てて階段を上ってくる音。

俺は、熱にうなされたまま

意識の半分が遠ざかっているまま、それを聞いていた。

「お前…」

憤怒の表情のあの女。

棒を握り締めている。

「余計な真似をして!!!」

そう言いながら、棒で俺を殴る。

たぶん、昨日瑛梨香を助けた事を言っているのだろう。

この女は、あのまま瑛梨香が襲われてもよかったのかもしれないな。

いや、助けたのが俺だというのが気にくわないのだろう。

痛みに堪え、熱にうなされ、俺はどうする事も出来ない。

「瑛梨香さんに近づくな!!そう言ったでしょう!!」

そう言いながら、殴りつける。

8年間、そうやってきたから、力加減は心得ている。

俺が骨折とかしたら、自分の立場はマズくなるから。

完全な八当たりだが、仕方ない。

俺が受けないと、屋敷に人間に行くんだから。

「奥様」

あの女の後ろから執事の諏訪が声をかける。

「何ですか!?」

憤怒の表情のまま、あの女は振り返る。

「病院の婦人会の準備をはじめませんと…」

諏訪の言葉に

「…そうね」

そう答えてから

「もう二度と、瑛梨香さんには近づかないでちょうだい」

俺に吐き捨てるように言うと、階段を降りていく。

「…諏訪さん」

俺は、痛みに堪えながら体を起こす。

「まだ、ご無理は…」

諏訪は、心配そうにしている。

「ありがとう」

それだけ言うと、諏訪は驚いたように

「いいえ、それが私の勤めですから」

にこやかに答えた。

「さ、お眠りください」

痛みに堪えながら、再び横になる。

「一応、お薬を用意させますから」

諏訪の言葉に俺は首を横に振って

「そんな事したら、諏訪さん…」

「あなたに身に何かあったら、旦那様に申し訳が立ちません」

そう言って、俺に布団をかける。

「お手数をかけます」

熱にうなされながら、俺は意識を手放した。


瑛梨香…


お前の顔が見たい…


昨日の顔を思い出せば、出すほどに…


お前が愛しくてたまらない。


震える体を抱きしめた時…


俺は、もう…




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