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帰宅

良平に送ってもらって家路につく。

玄関先には、お母さんが待っていてくれて

「瑛梨香!?大丈夫!?何かされてない!?」

心配そうに私の体を触る。

「大丈夫だよ。未遂だから」

また強がり言っている私。

「そんな訳ないでしょう?」

そう言って、抱きしめてくれたお母さん。

親ってありがたいね。

そう改めて思う。

私が、男子のシャツを着ている事と良平がジャージ姿な事から、察したのか

「良平君、ごめんなさい。シャツは洗って返すわね」

良平に申し訳なさそうに言うお母さん。

「いいえ、いいんですよ。俺の事は…それより…」

「分かっているわ。ありがとう、良平君」

良平が、何を言いたいのか分っているのかお母さんは、笑顔を作る。

「さ、中に入りましょう。良平君もどう?」

お母さんの誘いに、良平は首を横に振り

「いえ、俺も家に帰らないと…」

そう言ってから

「お誘いありがとうございます」

そう言ってから、頭を下げる。

「あら、遠慮しなくてもいいのに…」

お母さんは、引かない。

娘を助けてもらったのだから、と言わなくても分かる。

でも、良平は頑なに

「いえ、俺も帰ってやらないといけない仕事がありますから」

そう言ってから、去って行く。

「…本当、遠慮なんてしなくていいのにね」

私が呟くと

「…そうね」

お母さんが微妙な表情になり

「彼にも彼の事情があるのよ」

その顔は、少し険しかった。

「ねぇお母さん」

私は、すぐに

「何か知っているの?」

疑問を口にする。

お母さんは笑顔になり

「そんな事ないわよ」

そう言ってから私の肩を抱いて家の中に入る。

「お風呂沸かしておいたから、入りなさい。ツライかもしれないけど、お父さんが帰って来てから事情を聞かせて」

お母さんの言葉に、眉を顰める。

また、あの話をしないといけないのか…

そう思うと気が重いけど

何にもなかったのだから…

もう気にするのはやめよう。

そう思って、お母さんの言う通りにお風呂に入る。

体を洗ってから湯船に入ると

いやがおうにも思い出してします恐怖。

涙が止まらない。

あの時、良平が来てくれなかったら…

そう思うと身の毛もよだつ。

あの男にめちゃくちゃにされて、動画が世間に出回って…

ガタガタと震えてしまう。

良平には感謝しないとならない。

助けてくれてありがとう、良平。

「瑛梨香?」

私が、上がった来るのが遅い上に泣いている事に気がついたお母さんが、ドアを開けて覗いてくる。

「お母さん…」

「大丈夫?瑛梨香」

心配そうに見ているお母さん。

「大丈夫だよ」

本当は大丈夫じゃないのに、私は強がりを言ってみせる。

「無理しないの」

お母さんの言葉に、私は泣き出す。

「怖かったよ…怖かった…でも、良平が来てくれたから…」

その言葉に、お母さんは

「あなた…まさか…」

と言って言葉を切る。

「お母さん?」

私が首を傾げると

「良平君がいてくれてよかったわね」

笑みを浮かべて言う。

「うん」

「早く上がりなさい」

そう言い残して、お母さんは浴室を出た。

そうだよ…

良平がいてくれたから…私は無傷たぶんで済んだ。

心の傷も…そのうち癒える…

今は、そう信じたかった。

お風呂からあがって、しばらくすると、お父さんが帰ってきた。

息を切らせている事から、相当急いで帰ってきたのだろう。

「瑛梨香!大丈夫か?」

お父さんの言葉に

「大丈夫だよ、良平が助けてくれたから」

そう答える。

お父さんは、肩をなで下ろしたように

「そうか…良平君には、一度お礼に行かないとならないな」

そう言った。

そうだね、一度、ちゃんとお礼を言わないと…

「でも…」

お母さんが、少し迷っているようだった。

お父さんには、その意味が分かっているようだ。

「娘を助けてもらったのだから」

お父さんの言葉に

「そうですね」

お母さんは、迷いながらも納得した。

それで、私は悟る。

何か隠しているって。

両親は、私に言えない何かを私に隠している。

確信した。

前から、大野家の話なると、話を濁すような事を言っていた両親。

でも、良平と仲良くする事は何も言わなかった。

ふと、文彦さんの手紙の事を思い出す。


================================


【兄から見て、弟は何か内に秘めいているものがある。

悪い意味でだけど。

恥ずかしい話だけど、弟が何を考えているのか分らない。

良平は、僕にあまり好意をもっていないからね。

いつ、瑛梨香に牙を剥くか心配でならない。

だから、あまり良平には近づかないでほしい。】


================================


文彦さんの言う通り、良平には何か秘めているモノがあるのだろうか?

私の知らない良平の姿があるのだろうか?

そう思いながらも、私は良平に対して悪い印象は持てない。

だって、あんなに一生懸命…助けてくれたから…

肩を抱いてくれた。

抱きしめてくれた。

とても安心した。

そんな良平が…

なんて信じられない。

私の知らないモノを内に秘めているなんて。

私に牙を剥くなんて、信じられない。

だけど、文彦さんの言葉も否定できない。

あんな優しい人が、嘘を言う訳がない。

文彦さんは、何か誤解している。

そう思う。

きっと、文彦さんと良平の間には何かあって…

それがお互いの誤解に繋がって…

そう思った。

でも…

それは、私が何も知らなかったから…

知っていれば

分かっていれば

何が真実で

何が嘘か

ちゃんと見破れたと思う。


ごめんね、良平


私、何も知らなくて


良平の苦しみとか


悲しみとか


そういうのが分からなくて


本当にごめんなさい


良平…ごめんね


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