心拍数―良平サイド―
…俺を殺す気か?
瑛梨香に、そう言いたい。
生徒会の仕事で、各クラス及び各クラブを回っている俺達。
宗吾のありがたい(?)心遣いで、自分のクラスを回る事になってしまった。
確かに、瑛梨香が何をしているか気になる事は気になるが…
メイド喫茶だっけ?
確か、メイドさんをやる羽目になったとか、瑛梨香がボヤいていたな。
あいつ、昔からクジ運が悪いからな。
教室に入って、進行状況を確認しつつ、瑛梨香の姿を探す。
…見つけた。
と、同時に、俺の心臓は飛び出すくらいに大きく鳴った。
可愛いデザインのメイド服に、薄い化粧。
いますぐ抱きしめたくなるように衝動に駆られたが、俺の中のブレーキは上手に作動した。
まっすぐ見つめる視線を逸らせない。
『会長、どうですか?うちのメイドさんは?』
日野の茶化すような言葉で我に返る。
おい待て、企画書じゃあんなにスカート短くなかったぞ。
急いで確認する。
やっぱり、スカート丈が企画書より短い。
『スカートの丈、短めじゃない?出された企画書とはちょっと違うみたいだけど』
そうだよ、あんな可愛い姿見せられたら、誰だって…
気が気じゃない。
言い訳がましく高坂が何か言っていたが
『風紀を乱すような事はしないようにしてください』
それだけ言って、俺は教室を後にする。
あんな姿…これ以上見てられるかよ…
俺の心臓がもたない
バクバク鳴っている俺の心臓。
「可愛かったねぇ…澤部さん」
宗吾がからかうかのように言う。
俺は、宗吾を睨んでから
「別に」
と、答えた。
こいつ…
少しだけ殴りたくなる衝動に駆られる。
「にしても、よく我慢できたねぇ良平」
そう言って、俺の頭を撫でる。
完全に舐めてやがるな。
「うっせー」
そう言って、宗吾の手を払う。
そして、気を取り直して
「次のクラス行くぞ」
そう言ってから、手元にある企画書を見る。
次は…焼きそば屋か…
まぁ、何事もなく終わるだろう。
そう思っていたんだが…
このクラスも、女子の売り子が…やっぱり…丈が短かった。
短ければいいんじゃないんだよ!!
まったく、こういうのに釣られるのは、男ぐらいなもんだろ?
と、思ったら、男子の売り子はクラスのイケメンときた。
まったく、今年は売上NO.1に何かあるってのは、噂で流れているけど、大した景品じゃないぞ。
そう思いながら、次のクラスへ向かおう。
…だから、何なんだよ?
そう思いながら教室に入ろうとした瞬間
日野に連行される瑛梨香の姿が見えた。
戸惑っている姿が、何とも言えないくらい可愛く見える。
周囲の男子から注目の的になる。
もちろん、下半身がだ。
おい!瑛梨香をそんな目で見るな!
怒りが沸々と湧いてきたが来たが、抑える。
そうだよ…
俺には何の権利もない。
瑛梨香を、どうする権利もないんだ。
軽い自己嫌悪が自分を支配する。
瑛梨香…
どうしたら、お前を…
独り占めできるんだ…?