『Credentes cupidi』
ーー"フェイシンシャオニュ・ソフィア"………煌めきの星の下、宇宙の降る舞台、乙女騎士は可憐に舞い踊る!!!
…時は大凡七百年程昔辺りであるーー
当時まだ星の乙女教等と云うのはまだ認知されておらず、「単なる二次創作者の考えた妄想」として一蹴されていた。
其の上滅茶苦茶ヤバめな新興宗教扱いまでされていたのである。
「ーー………!……!!!……………、…!!…………………………」
シーフォーンは映像媒体に齧り付く様に眺め続けていた。自室を真っ暗にして。
「…………………………うーん」
そんな彼女は、何かに悩んでいる様子だった。
ーー『■■■■ちゃんの存在をもっともっと多くの人に認識してもらうにはやっぱりちゃんとした手段に頼らなきゃねぇ』
…と、或る日のシーフォーンは言っていた。
『でも姉ちゃん、どうして■■■■ちゃんの存在をそんなに広めたいの?』其れに対して、或る日のデインソピアが問い掛ける。
『…んーだってデインちゃんが考えた二次創作の主役だし、■■■■ちゃんは可愛いじゃん、其れに■■■■ちゃんと■■くんのカップリングを世界中の人に認識してもらえば実質公式になるし、デインちゃんの第一のファンだから■■■■■を公式に、世界全土で認められて欲しいって思ってるし、…と言うかそうじゃなきゃ駄目』
等と問い掛けに対して供述した。全く以てどうしようも無い駄目な女神であった。
『…えーっ!!そう言われちゃ■■■■ちゃんを生み出した立場だから二次創作者冥利に尽きるー!!!姉ちゃん大好き!!!!!■■■■ちゃんは可愛い』
『そう、■■■■ちゃんは可愛い』
……どうやらデインソピアの方も駄目駄目な女神だったらしい。自分達の事しか考えない上、他人に自分達の思想や主義を押し通す気満々である。
『でも「■■■■ちゃんは可愛い!!■■■■ちゃんを信仰しろ!!!」なんてやり方だとさー、ストライキやデモかよってw』
けたりと笑いながらシーフォーンは言った。
『…まあそうだよねー、姉ちゃんのやり方みたいに良いイメージで集団に広めるのは難しいもんねー…』
『そうだよーデインちゃん、クロルさん達を味方にするのだって簡単じゃ無いんだよ?まあ、あの人達の場合一つの版権好きで二次創作するって共通点があったから繋がれた上に上手く引き寄せられたんだから』
指をちっちっ、と軽く振って彼女はデインソピアに説いた。
『流石姉ちゃん、沢山の味方が居るのも姉ちゃんの人望だよね!!!』デインソピアは純粋に彼女の行いを賞賛した。…が、其の口振りからはまるでシーフォーンの本性に気付いていない様である。
…彼女はシーフォーン本性を知っている筈だし、其の上デインソピア自らもある種の良くない行いをしている身の筈であったりする。
例を挙げると人の者を許しも無く真似てーーええと、確か要するに"トレパク"というやつで公開し、更に整理と称して一覧から削除する事で其の証拠隠滅までした。
また彼女が好きだと公言しているとある版権の集まりの中で皆の前で度々過激な発言をしたり荒らしたりとやりたい放題していた事すらある。
ええ?そうだな、確かーー
"もし■■くんイベが1位取ったら深夜の街中を大声で叫びながら走り回る"
って、当時のデインソピアは言ってたな、あと其の時のSNSの名義は■■■■ちゃんと同じ名義だった。■■■■ちゃんの生みの親ってよりも■■■■ちゃんを自分自身に投影していたんだろうな恐らく。
何か怖い。
デインソピアと其の創作に対して過激派になるシーフォーンも度を超えていておかしいのだが、デインソピアも黒歴史まっしぐらな発言や行動をしていて中々にアレであった。
いや失礼、話が逸れてしまったね。では僕の茶々は此処で一旦止めておこう。
『ん〜っ、■■■■ちゃんは神話!■■■■ちゃんは宗教!!ってのを世界中に、しかも良いイメージで広めるには………!!!』
そうだ。
「単なる二次創作者の考えたぼく/わたしがかんがえたさいきょうの○○、或いは夢主」として鼻で笑われては駄目なのだ。
絶対的で不変的な存在として認知されるべきなのだ。
ーー然し星の乙女教を創り、そして自分達も信仰対象として入っているとは言え"宗教"てはあまりにも堅苦しく難しくなる。
(…宗教特有の重々しさや堅苦しさを取り去って世界中で親しまれる存在に、■■■■ちゃんが公式として当然になる為にはーー)
………という訳で彼女は部屋に籠もって少女が主人公のバトルもののアニメや映画を只管見続けていたのである。愛するデインソピアの生み出した■■■■ちゃんを広める為に。
(イメージ商戦、イメージ商戦……………、ああ、そっか!!)
ぼんやりと眺め続けていただけだったシーフォーンが、突如バッと立ち上がり何かを閃いた途端、部屋を明るくして飛び出していった。
飛び出した彼女が向かった先は、
「〜デインちゃあああああん!!!!!!!!!!」
星都ソフィアリア・イルのデインソピアの廷まで、どうやら途中道草を食う事も休む事もせず其の儘飛んできたらしい。
「うわっ姉ちゃん!!!?」勿論デインソピアは吃驚した。何せ、彼女もまた■■■■ちゃん、星の乙女教を広める為に躍起になっていたからである。
「どうしたの姉ちゃん…」肩で息をするシーフォーンを見て若干引き気味ながら気に掛けるデインソピアに対し、シーフォーンは暫くはーはーと息を吸い身を整えた後、デインソピアを前に大きな声で嬉しそうに話し始めた。
「ねえ聞いてよデインちゃん!!!シーフォめっちゃ閃いた!!!アニメ作って世界全土に放送しよう!!大々的に■■■■ちゃん売り込もう!!!!!」
そう語る彼女の目は爛々に輝いている。寧ろギラついてさえいる。
「え…ええ!!?■■■■ちゃんを売り込む???姉ちゃんとこの幼女ちゃんじゃなくて??????????」
デインソピアは酷く戸惑い、混乱していた。
「実は此処来る迄に色々考えてたんだーー例えば■■■■ちゃんの台詞、えーっと…『"フェイシンシャオニュ・ソフィア"………煌めきの星の下、宇宙の降る舞台、乙女騎士は可憐に舞い踊る!!!』って台詞が決め台詞」
「えええ???待って待って姉ちゃん何だって??????????」
「■■■■ちゃんは変身するヒロインなの!!!そして■■くんを運命の人的なポジションにしてさ、■■■■ちゃんは変身するとフェイシンシャオニュ・ソフィアになるの!!!!!」
シーフォーンの機関銃語りは続く。
「でもって変身した■■■■ちゃんはデインちゃんの女神態と同じデザインにして戦い方もデインちゃんと同じにすれば良いの!!!デインちゃんのイメージアップも兼ねてさ!!!!!!!デインちゃんの事「苛烈」って言う馬鹿共にあっと言わせてやろうよ!!!!!!!!!!」
そしてシーフォーンは勢いで机をバンバンと叩きながら、衝撃的な言葉を吐いた。
「決 め 台 詞 、 女 神 態 の 時 の デ イ ン ち ゃ ん も 言 う 様 に し よ う ! ! !」
渾身の力作だと言いたそうな様子を含みながら、シーフォーンは天才の如き様相である意味革命的なトンデモ発言を吐かしたのである。
彼女の様子に一点の曇りも無い。
「待って待って待って待って待って????????????????????????????????」
戸惑うデインソピアを余所に、シーフォーンは其の儘勢いで■■■■ちゃんのアニメを莫大な財産を以て制作し、壮大な大作に仕上げた後デインソピアのイメージアップも兼ねて度重なる星の乙女教の布教キャンペーンを開き、挙句デインソピアは例の決め台詞を何度も何度も、羞恥の気の遠くなる迄、いや最早気の狂い果てた彼女達が平常なら恥ずかしい事も平気で言えてしまう様になる迄言い続ける事となったのである。
そうして、時は復讐者達の時間軸に至る事となり、意中のキャラクター相手に恋する乙女の様に、時に淫らに耽り夢見て狂い果てたデインソピアは言うのである。
ーー"フェイシンシャオニュ・ソフィア"………煌めきの星の下、宇宙の降る舞台、乙女騎士は可憐に舞い踊る!!!




