貧乏人と小さき大人
「呼び出しちゃってごめんね!」
「平気平気。久しぶりだな、アリス」
俺を呼び出したのは、アリスだ。
彼は俺に「バイトは大丈夫?」「今日は誰がついてきてるの?」とかを聞いてくれたので、答えてあげる。
「実質有給的な感じなんだね」
「そう聞くと現実みが凄いな‥‥‥」
アリスと過ごすのは気楽でいい。
「あ、ドリンクバーとか、頼んで良いからね。僕が呼び出したから僕の奢りだから!」
「‥‥‥呼び出したことそんなに気にしなくて良いからな?」
むしろ普通でいてほしい。
普通が嬉しくなってるから今。
まあ、奢りには感謝ですが。
「さてさて、どうした?宿題?」
「宿題は百合ちゃんとやったから平気だよ」
「こう見えて成績優秀なんだぞ!」と言いたいらしい。いや、俺より全然成績いいの知ってるよ?
「いやいや、そういうことじゃなくて!」
ありゃ、違うの。じゃあ、なんざんしょ。
彼は軽く頬を赤らめながら、言った。
「もうすぐ百合ちゃんの誕生日なんだ、そのプレゼントを考えてほしいんだ」
「あれ?そんな感じだったっけ君ら」とか脳内では思いつつ、「あ、そういうこと」と了承する。
彼は暑くなったのか手元の飲み物を飲み干して、取りに行く。
あ、俺も取りに行こう。
その後アリスは自分と俺の分のドリアを頼んで話を続けた。
「もう、昔みたいなプレゼントはしにくいと言いますか。なんとなく、気恥ずかしくて‥‥‥」
「だから相談したいのか」
「うん!お願い!」
念押しというか確認というか、手を合掌されてお願いされてしまった。
別に断る理由もない。
あと、アリスは笑っていた方がいいと思うし。
ドリアはいい腹ごしらえになった。
暫くは問題なく動けそうである。
「検討はつけてるんだけど、あと一歩欲しいんだ、だから実物を見た方がいいと思ってね」
「それは確かに」
「流石に幼馴染から貰うものは消えものの方がいい気はするけど」
いくつかの候補を見て周る。
値段、量等を目で確認しながら歩く。
「それでさ、僕、百合ちゃんに告白しようと思ってるんだよね」
「あ、そうなの?」
歩いてる道中、さらっと、そんなことを言われた。
「ん?告白って言った?」
「言ったよ」
アリスは笑って。
「だいぶ不思議な顔をしてるよ?大丈夫?」
「不思議な顔にさせようとしてこんなタイミングで言ったんだろ」
笑ってもらえるように、そして記憶に深く刻まれないように。
境遇は同じ。違うのは重さ。
彼は、アリスは俺の重さにならないように、記憶に残らないような笑い話にした。
結果的には学校での雰囲気や誰かしらの噂で耳に入るだろうが。
「時期はまだ、決めてない。けど、近いうちに、遅くても2年に上がる前には言うよ」
まるで「君はどうするの?」と言いたげに言う。
「振られるかもしれないけど、その時は‥‥‥」
と、そこまで言ってアリスは俺の後ろに隠れた。
ああ、百合がいたわけか。
にしても、振られる覚悟まで出来てるとは、ね。
俺に相談する必要無いんじゃないか?
アリスは俺より背は小さいくせに、相当俺より大人だった。
あけましておめでとうございます。
気乗りも、気分も、何もありません。
明るい話を書ける気も、書ける環境も薄くて暗い気分にわりとなります。
アイドル話の方が書けそうなのは余談。