お嬢様は一人抱え込む。
「はぁ~」
あの後結局何も進展無かったし‥‥‥
ここは家の大浴場。
だが、私一人だ。
私の部屋にもあるけど、ストレスがたまったらこっちだ。
「結局私は‥‥‥家に縛られて、未来なんて私には‥‥‥ないんだよね」
壁掛けの風呂用TVのリモコンを操作する。
「面白くない」
金持ちは他の人が思っている以上に縛られている。
行動も言動も友達も。
逆に言ってしまえばなんで春斗との関係が許されているのかもわからない。
髪を乾かしスマホを確認する。
忌まわしき人から一言入っていた。
『木曜日暇になったんだ。そっちに行ってもいいかい?』
私は『嫌だ』と打ちこんだのを送信せず慌てて消す。
代わりに『親に聞いてくる』と打ち込んで送信した。
結局、木曜日に来ることになってしまった。
憂鬱な日が早まってしまった。
その前に既成事実でも作ってしまおうか。
いや、出来ていたら苦労はしていないんだってば。
スマホを充電器にさしてその辺に放り投げ、私はベッドにダイブする。
気が付くと意識は落ちていた。
「今何時!?」
7時15分位を指す時計をみて少しホッとする。
アラームが聴こえなかった。
そういえば適当に放り投げてた気がする。
「寝坊なんていつぶりだろう」
いつもならこれより早く起きている。
朝風呂は出来ないだろう。
いや、頑張れば出来るかもしれないが気分が乗らなかった。
朝食も殆ど喉を通らなかった気がする。
頭が痛い。休みたい。
だけど春斗を心配させるわけにはいかないし・・・
「お嬢様、春斗様がお見えです」
「うわぁ!?」
私の上の空も原因だが唐突に現れる縁も悪い。
全て縁のせいだ。
私に非はない。
「わかった。すぐ行く」
最後にスマホをポケットにしまうと、部屋に鍵をかけ足早に玄関へ向かう。
「お待たせ、春斗」
「この程度は待ったに入らないから」
流石、春斗は優しい。
「それじゃ、行ってきます。お菓子ありがとうございました」
「行ってらっしゃい。瑞季も行ってらっしゃい」
「娘の私の方がついで扱いなのが気に食わない」
はぁ、まだ頭が痛いしふらふらする。
学校行くの辛い気がしてきた。
すると突然手を引っ張られる。
引っ張ったのは勿論春斗だ。
「そんなふらふらしてるやつが車道歩くなよ」
「あ、ごめん。ちょっと体調が良くなくて」
「風邪か?うつすなよ。高くつくんだから」
やっぱり春斗は春斗だ。
「大丈夫。少し気が楽になったから」
「何でだよ、てか、無理すんなよ?」
すると春斗は私の鞄を取り上げそのまま学校へ向かう。
「瑞季。おいてくぞ」
「全く。今行くから」
いつ、如何なる所でも春斗は春斗らしい。
ただ、スマホが震える事に対する恐怖は春斗の笑顔では拭えなかった。