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彼女は貧乏人《おれ》のお嬢様で幼馴染で恋人です。  作者: 葵ソラ
一年生●三人の彼女と夏休み
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貧乏人とせめてもの抵抗

また短いのを‥‥‥

「あいつらは人間以外の動物なのか」

首には噛まれたような跡。

実際噛まれたんだけども。

痛かった訳ではない。

ただ、目立つのだ。跡が。

擦って取れる代物ではない。取れたのもあるけど、それキス痕だろ。

どさくさに紛れて色々やってくれたよ、あいつら。


「数日で取れると良いんだけど」

面倒くさいことはごめん被りたい。



やっと、ゆっくりできるから、しばらくはここにいたい。

扉には鍵ではなくつっかえを採用したのだ。

また、マスターキーを取り出されかねない。

所謂、秘密道具『マスターキー』という奴である。

向こう陣営は妹2人を除き『四次元秘書』を使えるのでしょうがない。



ここで、プカッと何かが浮かんだような気がした。

気のせいだ。

多分バブルバスとかそういった類いの奴だろう。

そう信じたい。信じたかった。


「つっかえの対策が出来なかった」

やっぱり人、楓だった。

「鍵はいるけど水中通路。本来はお湯の張り替えに使ってる奴だけど」

「そこまでするか」

「全員、そこまでする」

楓が来たのだから、他は当然気が付く。

妹2人はまだしも他の2人の察知はこういうときだけ異常に早い。

すぐさま瑞季と藍が水面に顔を出す。


「ぷはっ!」

「ちょっと苦しかった」

「裏切り者が‥‥‥」

妹2人も続くように水路から顔を出した。

「裏切ったつもりは無いんだけど‥‥‥ね?」

「尊い犠牲だった」

「勝手に死んだ扱いするな」

雪はマンガっぽい発言を連発するんだが、どこからの影響なんだ。


「水路、閉じてきましたわ!」

「ナイス判断」

鍵は向こうの手元。

女子5人(そのうち2人は妹)との混浴が始まった。


が、俺は即座に逃走を決行。

阻まれたのは言うまでもないか。

しかし下半身を守り抜いただけでも誉めてもらいたいなぁ‥‥‥



「そう来たか」

別に家に返してもらえるなんて甘いことを考えてた訳ではなく。『個室に入られないようにする方法』を考えてたのだが、

大部屋に布団が敷かれるという体制を取られてしまった。

荷物を取りに来ただけなのだが、これだけで察してしまえるのは慣れなのか、毒されただけなのか。


個室でも突破されないとは思ってないけどね。

とりあえず今夜はあまり寝られないのを覚悟することにする。



夕食もそれはそれは騒がしかった。

妹2人が食べるのを止めるのは数十分に一回だし、俺は何を食べたかも覚えてないくらいに3人に勧められた。


「これで睡眠も妨害されたら、体が持たねぇ‥‥‥よ」



「春斗、先に戻っちゃったね」

「部屋は一緒、抜かりは、ない」

「流石ですわ」

と、思ってたんだけど。

「あれ?春斗、寝てない?」

「寝てる。爆睡」

「布団も掛けずに‥‥‥」

方向も逆向きだ。

倒れるように寝たと考えて間違いは無さそう。

「あーあ、逃げられちゃったか」

夢の世界への逃亡。

少し目を離した隙の最善の一手。

まあ、本人はそんなつもりもなく寝落ちしただけなんだろうけど。

なんか、負けた気がした。

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