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彼女は貧乏人《おれ》のお嬢様で幼馴染で恋人です。  作者: 葵ソラ
一年生●三人の彼女と夏休み
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貧乏人といもうと様!?

「予想してたのより、遅かった」

「あれ以上に何を求めるんだ、うちの妹は」

ジェットコースターに乗った感想がこれである。

俺は十分に早いと思いました。


「春兄?」

「いや、一つ乗るだけで疲れるな、と」

「もう、まだ時間は沢山あるんだから、楽しまなきゃ損だよ?」

「そうなんだろうけどさ」

多分そんなことしたらすぐにでもヘトヘトになるから。


「それに春兄はあれだけバイトしても大丈夫なんだから問題ないでしょ?」

「いや、全く別問題だと思う」

体力より気力を削られるバイトです。

わかってはくれないと思うけどね。


「春兄はさ、いつもみたいにしてくれないの?私だと、いもうと様?」

「いや、どういうこと」

「私も皆みたいに慕われてみたいな、って」

「普段そんな言葉使わないから」

「じゃあ、春兄って何の仕事してるの、それ」

「俺でもよくわかんない」とは言えないわけで、苦肉の策をとることにした。

「えっと、()()そろそろ時間が‥‥‥」

ここまで言うと亜季は真っ赤になった。

俺も真っ赤になりたい。

いや、なってるかも。


「‥‥‥恥ずかしいから止めて」

安心して、俺ももう、言いたくない。


三時間が経過。

並ぶのにそこそこの時間が掛かった為、まだ乗りきれていない。


「春兄、お腹すいた」

「同じく」


近くのベンチに腰掛ける。


弁当。

俺らの場合はこれに限る。

尚、作ったのは俺一人。


「流石、春兄。二人分なら余裕だね。中身は無事?」

「暑さがまだこのくらいだったから良かったけど、これ以上暑くなったらもう少し保冷剤が必要になるかもな‥‥‥」

半分以上溶けた保冷剤。

「ほんとだ。危なかったね」

「ギリギリセーフ」

亜季の弁当箱は俺より一回り小さい程度の物で、女子の中では大きい方だと思う。

まあ、重箱に入れてくるのを数には含めていないけれども。


「春兄、エスコート手慣れてたね」

「なんだろう、あんまり嬉しくない」

「春兄は()()()()()()()必要な事でしょ?」

「そうかもしれないけど‥‥‥って彼女出来たこと伝えたっけ?」

「今、知った」

「嘘?」

「カマかけました」

流石は妹様である。

まんまと引っ掛かりました。

「んで、三人のうち、誰なの?」

そして余裕で選択肢を狭めてくる。

これ、言っていいのだろうか。


「言いにくいなら私が当ててあげる。言いにくそうだったから、瑞季ちゃんでは無さそう。したら二択だから‥‥‥」

真剣に考えてるところすいません。「三人とも」が正解です。

「ここは押しに負けたと見た!楓ちゃんだ!」

「‥‥‥回答言っていい?」

「うわぁ、外した流れじゃん。残念‥‥‥当てたらアイス買って貰おうと思ったのに」

「えっと、正解は‥‥‥」




「‥‥‥三股」

妹様の視線が痛い。

「そもそも持ち掛けてきたのは向こうだから」

「瑞季ちゃんも瑞季ちゃんだよね、友達思いと言うかなんと言うか‥‥‥」


この状況をどう乗りきればいいのか、わからない。

亜季はそっぽ向いてるし。


「どうすれば機嫌直してもらえる?」

「‥‥‥アイス」

アイス最強ですわ。


修羅場(当の本人は俺一人)を乗りきったのでアトラクションのはしごを再開。

途中再度ジェットコースターに乗らされたときは死ぬかと思った。


「春兄、これで最後だね」

「時間的にもな」

時刻は6時半を過ぎたくらい。

遅すぎると心配されるし、夕飯を作れないのでそろそろ帰る準備をしないといけないのだ。


最後に乗ったのは観覧車。

乗った最初の一声がこちら。


「「涼しい」」

気温は高い日では無かったんだろうけど、暑くないわけがない。

待ち時間は結構地獄でした。

しっかりとクーラーが効いていた観覧車内は天国かもしれない。


「楽しかったね、春兄」

「振り回されてばっかりだった記憶」

「それは春兄が悪いので」

主に振り回されたのは弁当の後だから、その通りでしかない。

「‥‥‥春兄はさ、瑞季ちゃんが好きなんでしょ?」

「その話続いてたのか、まあ、そうだけど」

三人と付き合ってることの導入部分で話すはめになったやつな。

「他の二人は嫌いなの?」

「嫌いじゃないよ、勿論」


亜季は何が言いたいんだろう。

この質問に何の意味があるのだろう。


「実際春兄には得しか無いんじゃないの?瑞季ちゃんとは絶対に結婚出来るみたいだし、あ、結婚おめでと」

「二年後なんで、気が早い。得しか無くても、罪悪感しか無いと言うか」

「なんで、罪悪感があるのか、私にはわかんないけど」

いや、世間的にヤバイ人に見られるの確定だろ。

「自分の事を好きな人を振る方が罪悪感大きいと思わない?」

「‥‥‥その通りかもしれない」

「春兄は優しいから、きっと三人と結婚しても幸せに出来るよ」

観覧車は一周を終え、俺らは地上へと舞い戻ってきた。


観覧車から降りたので話は途切れさせられた。

が、話は続いていた。


「‥‥‥じゃあ、これで最後」

退場ゲートに向かう道、先行していた亜季が話を続けた。

「泣かせたら、許さないから」

「それは『振るな』って言いたいのか」

「振るなら振るで泣かせちゃダメでしょ?」

「無理難題では」

やっぱり家の妹様は難しい問題を突きつけてくる。


()()()()()()泣かせないように。()()()からの命令」

「善処する事にするよ、妹様」

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