貧乏人と宿題。そして日曜日へ。
「結局、あんまり進んで無いじゃん」
「楓ちゃんが早すぎるからですわ‥‥‥」
「お前、それ、夏休みの半分は宿題で消えるスピードだぞ‥‥‥」
しかし、英語は早いんだよな。
流石留学経験者。
「俺は楓ほど早くはないから、安心してくれ」
「楓ちゃんは比較対象にはしてはいけないと思いますわ」
かくして宿題を進めていった。
なお、楓に教わっている瑞季は泣き言を上げていた。
南無、俺は助けられない。
昼休み。
瑞季は倒れていた。
無防備な姿で倒れないでください。
藍も瑞季程ではないにしろ疲れた様子だ。
「私も春斗に教わった方が効率がいいと思う‥‥‥」
「逃げるの禁止」
瑞季は逃げられない。
「それじゃあ、昼食の準備をしてくるよ」
「待って」
「駄目」
「駄目ですわ」
全力で止められた。
「春斗君は私達を労うべき」
「それの方が仕事として認められるべきですわ」
「準備は他の人でも出来るし」
三人と関わってる方が、手伝うより余程疲れることわかってるだろ、お前ら。
「そもそも、労うってなにすればいいんだよ」
「ヤる?」
「やらない」
そればっかりか。
「誉めてくれたりしてくれれば、いいかな」
誉める、難しいことを言うな。
「私はハグ位が順当だと思いますわ!」
「楓はともかく誉めるのとハグじゃ難易度が違うんだが」
「「ハグの方で」」
やっぱり共犯なんじゃねーの、お前ら。
「労うってことはする方なのか」
「そう、だね‥‥‥」
照れてたら先に進まないのでサクッと。
「(声にならない叫び)」
「ビックリした、どこから出てるのそれ」
「ご、ごめんね、春斗。ありがと」
あと、二人。
「カモン」
「もう、なんか楓は‥‥‥」
小さいからなのかあんまり、瑞季に比べたらそんなでもない。
でも、ここで楓は楓なりのめんどくさいところが現れた。
「なっ‥‥‥」
「気持ち良かった?」
ちょうど楓の頭は真横にあった。
顔の真横にあるもの、そう、耳を舐められた。
「離すぞ」
「流石に瑞季ちゃんと同じ時間だけはしてて」
でも、なんか悔しかったので少し早めに離してやった。
「お、お願いしますわ」
「お、おう」
提案者がこれとかいうね。
「ゆ、ゆっくりお願いしますわ‥‥‥」
「了解」
できる限り優しく‥‥‥っと。
「これでいい?」
「春斗に抱き締められて元気出た!」
「幸せ」
「良かった、ですわ‥‥‥」
正直宿題の量が変わる訳じゃないし、大差ないと思うけどね。
それより瑞季以外の二人を振る方法を考えないといけないんだから。
なんか、キープみたいなことしている気がして、後ろめたい。
昼とんで夕方、勉強の後半戦が終了した。
「もう、暫く勉強したくない」
「私もですわ」
結局か。
俺と楓は終わりまであと一歩位まで終わらせた。
人のを見てると、追い付かれたくなくて、頑張っちゃうのかもしれない。
「春斗君はどうする?帰る?」
「‥‥‥帰ろうかな。明日は休みだし」
「わかった」
楓の家の前には車が用意されていた。
いつの間に。
「なんで三人は乗ってるんですかね」
「彼女だから」
「右に同じ」
「ですわ!」
「やっぱり共闘関係なんじゃないの、三人は」
もう、三人結託してるじゃん。
皆で結婚する気満々じゃん。
「つっ、かれた‥‥‥」
「おかえり、春兄」
「ただいま、亜季。急用じゃなきゃ明日にしてくれると助かる‥‥‥」
「急用」
「なら、聞こう」
急用とあらば、聞くしかあるまい
「明日、遊園地に連れてって」
「別に良いけど、突然だな」
「母さんが遊園地のチケットを貰ってきてくれたんだけど、二枚だけだから、お金ある?」
「今月は問題ないと思う。超余裕では無いけどそのくらいだったら問題ないと思うぞ」
夏休みでバイト増やせましたし!
「じゃあ、春兄は寝ていいよ。明日楽しみにしとく」
「任せとけ」
次の日
「なんで二人きりなんだ?」
「二人が遠慮しちゃったから‥‥‥かな」
残りの二人分、俺が出す予定だった。
しかし雪と母は俺と亜季が起きたときには家にいなかった。
かなり早く起きたのにそれより早いとは思わなかった。
それに関しては亜季も頭を抱える案件となった。
「『大丈夫』って言われてもな」
「素直に楽しめる気がしないよね」
何となく、悪いことをしている気分になる。
「でも、折角来たし、遊ぶか」
「お土産覚悟して貰わないとね!」
切り替えの早さなら亜季は強い方だと思う。
さっきの気分から一転。
一瞬にして楽しむ女の子の顔となった。
「やっぱりジェットコースターじゃない?」
「高くない?」
「でも、春兄三階から飛び降りたこともあるらしいし平気でしょ?」
「あれは一階下に降りただけだし、これとは勝手が違うだろ」
あれは急だったからです。
「物は試し!時間は有限!行こう!!」
亜季に引っ張られてジェットコースターへ。
大変な一日になりそうだ。
妹ちゃんのターン!!




