お嬢様は奥手すぎる。
弟のインフルのせいで深夜起きていられなかったので遅れました。
私も風邪を引いたのですが辛うじてインフルではなかったです。
「学校終わったー!!」
心の中で私は呟く。
昼休みの時は話しかける事が出来なかったけどこのあとは春斗がバイトに来る。
「瑞季?瑞季~?」
耳元で私の名前を呼ぶ声
「は、春斗!?」
「一緒に帰ろうって言ってきたの瑞季の方なんだけど」
「細かいことは良いの!帰るよ!」
まさか春斗がバイトに来るからって上の空になってちゃ駄目だよね。
来てからが本番なんだから。
「春斗は向こうの部屋で着替えてきてね」
「制服みたいなのがあるのか?」
「えーと、そんな感じ」
春斗ならどんな服でも似合うと思うけどあの服ならより似合うと思うな~。
早く着替えが終わらないかな。
静かに扉が開く。
出てきたのは執事服を着た春斗だった。
「お、お待たせしました、お嬢様」
まだ慣れないらしい口調で私に言う。
やっぱり似合う。
「に、似合ってるんじゃない?」
ってなんでツンデレみたいになってるのよ私!
「ありがとうございます‥‥‥なんか照れるなこれ」
春斗もそうじゃなーい!!
と、ここで熱くなってしまったので、一つ咳払いをして、次へと進ませよう。
「ごほん。じゃあ、私の部屋の掃除からしてもらおうかな。あと、二人きりの時はいつも通りでいいから」
「了解」
そうして春斗は黙々と掃除を進めていく。
あれ?私何のために春斗を雇ったんだっけ?
そうだ、休日に春斗に会うための口実だった。
あわよくば襲う‥‥‥なーんて。
‥‥‥いきなりはハードルが高いから次回からにしよう。そうしよう。
「瑞季」
「あ、ごめん、何かあった?」
「ベッドの下に分厚い本が‥‥‥」
「見た?」
「見てない」
春斗の手から本をひったくる。
あぶなかった。
あれには昔からの春斗の写真が入ってるんだから。
本人に見られたらどうなるかわかったものじゃないしね。
勿論しっかりした場で撮ったものしか無いんだけども。盗撮とかしてないからね?
今度からはしっかり管理しないと駄目ね。
約、一時間後掃除は完了したようだ。
「このくらいかな」
「流石‥‥‥」
なんか普段の私の部屋とは比べ物にならないくらい輝いているんだけど?
「ごめん、瑞季、シャワー借りていい?」
「はい?」
「流石に、汗や埃を落としたい」
「良いけど、着替えは?」
「同じのがもう一着あるからそれに着替えるよ」
あれ?
春斗お風呂場に行ったの?
「気になるなら見に行けば良いのでは?」
「縁。出来ないことわかってて言ってるなら辞めさせるから」
「お嬢様はヘタレですからね」
「じ、じゃあ行ってやるから見てなさいよ!」
彼女は「冗談ですよ」と間に挟んでから話を続ける。
「今の件とは完全に別の件ですが、次の土曜日いらっしゃるようですよ」
「憂鬱。あの人苦手なのに」
「春斗様がいるからと振れば良いものを」
「出来てたら苦労してない」
最悪の休日が約束されそうだ。
「それで、風呂場にはいつ行かれる予定で?」
「行かないから!」
今日の夜は春斗の裸を想像しながら寝ることになるかもしれない。