貧乏人の誕生日
春休み終わってしまう・・・
「誕生日おめでとう!!」
そう言われた放課後、瑞季の家。
今日は俺の誕生日である。
日付にして4月23日。
火曜日なのでその次の日に祝われると思っていたのだがいつのまにか準備がされていたらしい。
春に生まれたから春斗。
分かりやすくて自分の名前だが好きだ。
「おめでとう、この間瑞季ちゃんが教えてくれた。プレゼント間に合って良かった。」
「おめでとうですわ、準備も間に合って何よりですわ。」
「藍ちゃんのお陰だね。春斗のこと引き受けてくれてありがとうね。」
「楽しかったし問題ありませんわ。」
本当は恥ずかしくて思い出したくないんだろうな。
恐らくあの事は言っていないだろうしな。
「今日は春兄バイトだから祝えないかなとか思ってたんだけど祝えて良かった。」
亜季に隠れている雪もコクンと頷く。
「春兄のバイト先瑞季ちゃんの家の人が関わってるんだね、この間の時は向こうで仕事してるって効いたよ。」
俺の家の人に言わないって言ってたけど隠し方が下手すぎるだろう。
「それでこないだのキスした女の子も一緒なのはなんでなのかな?」
「瑞季達の親友だからだよ、それに普段はそこまで積極的じゃないし。」
「ふーん?」
俺は改めて藍に亜季と雪を紹介する。
それに対して藍も自己紹介をした。
「それで、春兄は誰が本命なの?」
「・・・決められてない。」
「だと思ったけど、春兄が優柔不断な事は知ってるけどこの三人もよくそれを受け入れられてるよね。」
話を引き伸ばしてる本人ですが俺もそう思ってます。
普通なら呆れられててもおかしくない。
「昔から好きだったから諦められないかな~。」
「私には春斗君しかいない。春斗君は私のすべて。」
「あんなことをしてしまったのですわ、責任を取らなくてはなりませんもの。」
「・・・予想以上に厄介かも。」
なんで亜季は瑞季達を目の敵にしてるんだよ。
訳がわからん。
そういえば場所は何故か瑞季の部屋だ。
何か理由でもあるのだろうか。
深く考えても仕方ないけども。
瑞季が「先に皆でプレゼントを渡そう。」と言うのでプレゼント交換から始まった。
「誕生日プレゼントは私・・・と言いたいところだけど自重。春斗君は服が少なそうだからもう一式持っておいた方が良いと思って、買っておいた。」
「洋服はありがたいけど一式は高いんじゃないの?」
「そこまで高くないから気にしなくて良いよ?気になるようなら私の誕生日にでも何か頂戴?暫く先だけど。」
「わかった、考えておく。それじゃ有り難く貰っておくよ。」
「気持ちよく貰ってくれた方が私もうれしい。」
楓に服を選んでもらうのは二回目だ。
実際金額が気になってしかたがないのだが。
「次は私ですわ!」
藍はどのタイミングで買って来たんだろうか。
「とは言ったものの時間が足りませんでしたから、家にあったものでなんとか間に合わせましたわ。」
「そこまでするくらいなら無理しなくても良いのに。」
「そろそろ買い替えるつもりだったようですから逆にありがたいですわ。」
「買い替えるつもりだった?」
後ろに四角い箱を押してくる篠宮さん。
それなりに大きいが何が入っているのだろうか。
「私からは洗濯機ですわ!」
「予想外!!」
「動作確認はしておりますのでご安心を。」
「いや、そこを心配しているわけでは無くて。」
「春斗様瑞季様の家で洗っていた様ですしちょうど良いと思いまして。」
「欲しかったのはあるんだけど・・・」
「リサイクルですよ、春斗様。」
まあ、確かに勿体無さそうだし貰っておくか。
「お嬢様の誕生日は他のお二人より早いので誕生日にでもお返しいただければ。」
「楽しみにしてますわ。」
「じゃあそれで。」
「私のパクリ。」
「使ったもの勝ちですわ。」
「最後は私の番だね!!二人とも春斗が持ってないものをしっかり理解してるからなぁ・・・」
「本当にね。」
「ほんとに私から出すもの無くなっちゃう。」
それでも用意してきたのだから驚きだよなぁ・・・
「やっぱり春斗にはこれかなって思って。」
段ボール一杯に詰まっていたのは食料品。
日持ちするものであれば暫く大丈夫だろう。
「あと、春斗それ持ってたんだね。何時貰ったの?」
瑞季が「それ」と言ったのは藍から貰ったバッチだ。
「これか。藍を助けた日だよ。初日。」
「随分と気に入られたわね、私たちより早いじゃない。」
「私達でも数日。」
二人が言うなら相当だな。
「だから私たちからも。」
そうして渡されたのは二つのバッチ。
「私からも信頼の証。」
「プラスマーキング。」
「その言い方は合ってますの?」
瑞季は食料品、楓はサービス業の場所で使えるものらしい。
「マーキングなんて言い方は悪いかも知れないけどこれで私も渡せた。」
「私も。」
「あと、足りないのはアレだけだね。」
「さすがに藍ちゃんとの差は中々詰まらない。」
お互い仲こそ良いが恋敵な訳だしいつ仲違いしてもおかしくないはずなんだけど、平和なら良いかな。
「私からも誕生日プレゼント。前のが大きすぎて小さく見えちゃうけど。」
「あの三人が大きすぎるだけだって。毎年ありがとな。」
「・・・私も。」
「雪もありがと。」
一応誕生日は母親から貰ってる金額で自分の生活に支障がないレベルで買うって言ってるはずなんだけど金足りてるのか心配だな。
「そろそろ・・・」
「ケーキをお持ちしました。」
「縁ありがと、下がっていいわ。」
「はい。」
全くケーキも用意してるのか、ありがたいけど申し訳ないなぁ・・・
その後俺を除く瑞季、楓、藍、亜季、そして声は小さいけど雪がバースデーソングを歌ってくれた。
「おいおい、ローソク年齢分かよ。」
「ほら春兄吹き消して!」
「はいよ。」
俺が息を吹き掛けローソクの火を消す。
「おめでとう!!」と言う全員の声が聞こえた。
「春兄ケーキ美味しい!!」
「おいしい。」
「食べるの早いな、全く。・・・ほんとだ、おいし。」
時間はすぐに過ぎていった。
特に亜季と雪はこの時間まで起きてることなんてないから眠そうだ。
「春兄、眠いから先に帰るね。おやすみ。」
「私も、おやすみ・・・」
「了解、すぐ隣だが気を付けろよ。」
「はーい。」
まあ、篠宮さん着いてったし大丈夫かな。
「いま二人には帰って貰ったけど俺達ももうお開きだろ。」
「泊まっていけば良いのに。」
「・・・すぐ隣だから関係無くね?と、言うかこのメンバーだと俺一人じゃん。」
「亜季ちゃんと雪ちゃんとは一緒。」
「そりゃそうだろ、妹だし。」
「二人とも義理でしょ、しかも年も離れてないのに。」
「ほんとにね、そろそろなんか言われてもおかしくないと思うよ。」
「雪ちゃんは人見知り直さないとね。」
「雪のは中々な・・・」
その後5分ほど話して・・・
「あ、ごめんな、わからない話ばっかりで。」
「聞いてるだけでも楽しかった。」
「春斗様、いつもより楽しそうに喋ってましたわ。」
「別に話すのは嫌いじゃないんだよ。」
ただ、話すことを探すのは苦手でいつもすぐ話が途切れちゃうだけで。
「でも気になることがあった。」
「ん?何かあったか?」
「亜季ちゃんって義妹?」
「あれ、言ってなかったっけか?俺は一人目の父親の子、あの二人は二人目の子だよ。」
「初耳。」
「聞いたことありませんわ。」
あー、言ってなかったか。
このタイミングで話してもな・・・
「まあ、また今度で良い?色々あって疲れちゃった。おやすみ三人とも。また明日ね。」
あー、逃げた。逃げちゃったよ畜生。
話しても大丈夫な人しかいないけど言いたくは無いかなぁ・・・
「・・・瑞季ちゃん。聞きたいことがある。」
「そうですわ!!」
「それ私からじゃない方が良いんじゃない?」
「そう言われると・・・そうかも。」
「でも気になりますわ・・・」
「大丈夫、春斗なら話してくれると思うよ、いつかはわからないけど。」
義妹って表現好きだったりする。




