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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第十章 南部軍、津軽氏を従属させる 天正七年(1579)旧暦七月十一日夜
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嘗胆 第三話


 明かりを求めた一匹の虫は(かがり)()を目指してみるも、近づくと空気が熱を帯びてくるので離れようと考える。しかし一番近くの明るいところはそこなので、ついさっき考えたことを忘れてまた近づいてしまう。そして熱に気づいたときには、“ジュッ”と音を立てて身を焼き尽くす。他の虫共も初めこそ哀れに思うものの頭が悪いのですぐに忘れて、そのわずかな灰になる(さま)があと少しで己の運命であることさえ知らない。



 久慈(くじ)(ため)(きよ)沼田(ぬまた)祐光(すけみつ)は刀さえ付けずに、浪岡城北方の杉沢に置かれた南部本陣へと入った。二人とも草履の下には一文銭をわいつけて、これはもし地獄へと落ちてもこの銭を差し出せば針の山を通らなくてもよくなるという迷信による。つまりは死ぬ覚悟で、津軽の未来を背負って話しに来た。敵兵らからみてもその様はすさまじく感じたようで、誰も面白半分にちょっかいを出すなどしない。二人のために道は開かれた。


 本陣の真ん中、白幕の内側にいる奥瀬善九郎(おくせぜんくろう)。これで戦をせずに済むと予感した。一方で横にいる堤則景つつみのりかげはひたすら目をつむり腕も組んで、心の中ではもし二人が()なことを申してくるなら直ちに斬り殺すつもりでいた。奥瀬が止めようとも……いや、奥瀬殿が止めるのならなんとか気持ちを抑えるが、それでも相手が挑発するならどうなるかわからぬ。知らぬうちに則景は奥瀬の顔を睨んでしまったが、奥瀬は心と表情を(たが)える堤の心の乱れようを察して、あえて気づかないふりをする。


 いざ津軽側の二人が白幕の中へと入り、奥瀬と則景の目前に(まみ)えた。為清は……至極真顔で、相手にこちらの内情を決して悟られまいとしているようだ。それに対して後ろにいる沼田はさすが津軽の軍師と名の高い男。こちらの考えも透かして見ているかのようで、一筋縄ではいかないだろうと奥瀬も身構えた。だからこそ沼田のペースに巻き込まれないうちに先手を打って……奥瀬は二人に申し渡す。


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