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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第十章 南部軍、津軽氏を従属させる 天正七年(1579)旧暦七月十一日夜
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逃亡 第五話

 為信率いる津軽軍は()(こく)(午後十時)より少し前あたりであろうか、安東の残党狩りを兼ねて六羽(ろくわ)(かわ)を南下し、最終的に多田(ただ)(ひで)(つな)のいる()目内館(つめない)に入った。

 為信は隣に多田玄蕃(ただげんば)を連れて館の門をくぐる。玄蕃はすでに心を隠すような所はなくなり、今やすっかり疲れ果ててしまったようで、若いというのに歩くのもやっとのようだ。それでも父に再会を果たして、感無量のように見受けられた。しかしこれが最後だということは為信も、他の家来衆も口を避けても言えない。すでに誰もが悟っていた……秀綱が裏で仕組んだことを。誰かが(いく)さの責任を取らないと収まりが付かぬのだ。


 もの静かに、廊下の脇に(ともしび)が光る辺りで、為信は秀綱に対して命じたのだ。


「多田殿。あなたはこれより私と共に堀越ほりこし城へ参られよ。そこで膳を用意させます。」



 秀綱の方でも意味を悟ったようで……静かに頷くしかできない。為信は逆らう様子がないことを見定めて……次の言葉を伝えた。


「安心なされよ。多田殿がいなくなった後の館には玄蕃殿がいればよろしい。津軽には人が少なくなってしまった故に……代わりの者がおらぬのだ。」



 大甘(おおあま)だぞ。他の者は文句を言うだろうが……なぜ多田を潰さぬかと。だが津軽の内側で争っている暇はない。為信の心の内ではこのように思っていたことだろう。今は早く事を鎮めるのが急務である。






 そして裁定を伝え終わった後。為信はふらりと一人で誰にも気づかれないように……山の中へ姿を消す。するとブナの生い茂る中、向こう側の木の(かげ)より密使が参上した。彼は崩れた身なりで、誰もが見向きをしないだろう恰好をしている。薄汚いというか泥まみれという訳ではないが、誰も関わりたくないような……だからこそ津軽の大地を駆け巡るのには好都合なのだ。為信は周りに誰もいないことを確かめるなり……。


 密使に忠告するのだ。

「この話を決して漏らすな。」


 密使の方でも静かに頷き、すぐさまその場から姿を消した。





 これより津軽氏は大浦おおうら氏に戻り、すべてのいくさは終わる。


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