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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第十章 南部軍、津軽氏を従属させる 天正七年(1579)旧暦七月十一日夜
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逃亡 第二話

 そのうち東側より鬨の声が上がったような気がした。空耳かとも思えたが何やら不安な感じもする。カラス共があちら側より大勢飛んできて……あれはねぐらに帰るのではない、休む所を失って逃げてきたのだ。後を追うように小鳥なども騒がしく鳴き、何かが起きていることは確かな様である。ならばとこの障壁の一切ない平野である。遠くを見れば……目の肥えている者であれば1㎞少し先でしかないので細かな人の動きをも判るのではないか。所々の林に隠されはするものの、何やら激しいことが起きているか。物音も次第に激しくなっていくし……確かあちらは比山らが津軽軍と戦っていた場所ではないか。目が悪い者でも大きな大雑把な動揺というものは判るし、今となっては誰もが起きている事態を想像できた。最悪を考えれば……滝本はあることを恐れた。為信が生きており、油断しているであろう安東軍を急襲したのではないか。小勢といえども為信であればあり得ること。勝つ見込みがあってのことか、あちらには沼田という凄腕が仕えているから十分考えられる。


 では比山らを援けに行くか……滝本はひとまず周りを囲む兵らを見回しててみた。誰もが心を乱し、為信を討ち漏らしてしまった焦りもさることながら、こちらも津軽の兵に()られてしまうのではないかと無用なことまで口走っている。

 そんなはずはあるまいて、我らは何ヶ月も鍛えぬいた屈強の兵らぞ。それに先ほどの知らせでは安東(あんどう)(ちか)(すえ)様率いる本軍はいよいよ津軽へ乗り込むと聞いたぞ。負けることはまずない。

 だが一方で滝本の頭に悪い考えがよぎった。このまま比山ひやまらを援けても感謝されるだろうか。結果として為信を殺したという嘘の知らせを流してしまったし、何よりもいずれは津軽を治めるときに彼らと権勢を(きそ)うことになる。ここは兵もうわついているので、一旦は()目内(つめない)へ引き下がることにしよう。

 


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