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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第十章 南部軍、津軽氏を従属させる 天正七年(1579)旧暦七月十一日夜
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逃亡 第一話   +三々目内館絵図


 同じころ……滝本(たきもと)重行(しげゆき)岩舘(いわだて)で首をあらためようとしていた。大将の比山(ひやま)に為信の首を討ち取ったと報告したものの、自らの目で確かめたわけではなかった。甲冑から見ると確実に為信であろうし、まだ敵軍と戦っている最中であったのでそんな暇はなかった。そして為信を守っていた将兵を全て殺しきったので……誰が為信に扮していてもいいように、すべての兵を逃がさなかった。二人か三人ほどを思わず逃してしまったと後から聞いたが……ふん、もし奴らに為信がいたら私は物凄く不運だということ。



 夕日が今にも岩木山の裏に隠れようとする。空と山の境目より光が線を放ち、滝本は思わずその(さま)を見惚れてしまった。ずっとその先を、何もかも忘れて眺めていたい……いや、おのれにはそんなときはない。いずれまた見ることはできるのだから、今わざわざ眺めなくても済むこと……。そうして目線を下に落とすと、足元に茂るサイカチが目に入った。実をつけ始めているが……まだそんなに大きくはない。曲がりくねった形こそわかれど、中身は未だ膨らむ前だ。そんなに目立つわけではないのに……その緑色は他の雑草の中で際立って輝いても見えた。サイカチならばよく武士が好む植物である。“再勝(さいかち)”の言葉に通じるらしく、縁起がとてもよろしい。


 そして下から目と同じ高さへと視線を戻す。目の前に運ばれてきた木の箱は、台の上に静かにおかれた。この中に首が入っているそうだが……周りに集まった兵らは滝本が開けるのを待ち望んでいる。誰もが静かにその瞬間を待った……。黄色い光が(まばゆ)い中、滝本自らの手で蓋ははずされた……供回りの者に蓋は預け、滝本は二つの手で、首と胴体がくっついていたところを(つか)む。……肉の中に指がめり込み、生身(なまみ)の感触というものは否応なく伝わった。そして目線と同じ高さに首は上げられた。




 これは誰の首か。



 家来が言う。

「はい。津軽つがる右京亮うきょうのすけ為信ためのぶの首です。」



 いやいや……




 …………





 はかられた。




 滝本は……乱暴にも首をその場に投げ捨てる。



 三々目内館

https://18782.mitemin.net/i324251/

挿絵(By みてみん)





2018/02/15  挿絵に関して


出典元:特集 津軽古城址

http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/castle.html

鰺ヶ沢町教育委員会 教育課 中田様のご厚意こうい(あずか)りまして掲載が許されております。小説家になろうの運営様にも、本文以外でのURL明記の許可を得ております。


光信公の館

〒038-2725

青森県西津軽郡鰺ヶ沢町大字種里町字大柳90

http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/

TEL 0173-79-2535


鰺ヶ沢町教育委員会 教育課

〒038-2792

青森県西津軽郡鰺ヶ沢町大字本町209-2

TEL 0173-72-2111(内線431・433)

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