表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第一章 北畠残党、秋田へ向かう 天正六年(1578)晩秋
8/102

限界 第二話

 先が見えぬ。……ともすれ、何も手段を討つことができぬ。誰もが静まり返り、ひとまずは明日のために早く寝ようではないかとござを(かぶ)ろうとした。そんな時……






   ”逃げよう”


 その一言が、小さい声ながらもしっかりと皆の耳に届いた。




「……どこへ。」


「……秋田へ。石堂(いしどう)様があちらにいらっしゃる。」




 一筋の光明が見えた。しかしながら誰もが理解していた、その危険さを。




「秋田といえば安東。南部の宿敵ぞ。」


「そんなの言っている場合か。我らが死んでしまうぞ。」




 ……自然と二つの考えに分かれた。地獄が続こうが諦めてここに留まろうと考える者も大勢いる。かつて管領の水谷(みずたに)(とし)(ざね)が津軽氏に下ろうとして油川を出た際に、容赦なく滝本に殺されている。このたびも同じ繰り返しに終わるだろうと。秋田へ行くのは敵方に寝返るのと同じ……。それにどうやって。するとある者が言った。


「……油川には浪岡と馴染みの商家が幾人かある。海路で(そと)(がはま)を脱出する。」



 山手やまのての茂みに隠れて荒川に出さえすれば、そちらに小舟を寄せてもらって一気に下る。河口には(しじみ)(かい)村という集落があり、そちらの湊に大船を待機。皆々乗り込み、秋田へと向かう寸法だ。ただし浪岡と親しい商家といっても今つながりがあるわけではないし、ばれる危険を背負ってまで尽くしてくれるところがあるかどうか。さらに逃げるということは、滝本はおろか奥瀬(おくせ)氏も裏切ることになる。






 ……話こそ盛り上がったが御所号の(あき)(うじ)にも相談しなければならぬし、なんとなく馬鹿げた夢想めいた話のように思われたのでこの話はその場で終わった。しかし誰ともなく話したいという気に襲われ、結局は数日後に(あき)(うじ)へ持ちかけてしまうのである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ