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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第八章 津軽為信、死に窺う 天正七年(1579)旧暦七月十一日昼
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狂乱 第一話   +乳井茶臼館絵図



森岡(もりおか)信元(のぶもと)殿率いる軍勢は、つい先ほど水の手を断つことに成功いたしました。」


 伝令はあたかも勝ちを確信したかのように本陣にいる為信や八木橋(やぎはし)に話した。……安東軍は拠点こそ奪ったが、寺や櫓の隅々まで知っているわけではない。一度は攻め手側として山城としての欠点を把握しただろうが、所詮は初めて籠る拠点なので慣れるには時間がかかる。




 ならばこちらより福王寺へ攻め入るか。いや……沖館(おきだて)高畠(たかはた)から退いたとはいえ、それはあくまで脇腹を取られるのが嫌だったまでのこと。山には確実に千を超える兵らが籠っているし、士気高く、まともに戦えばこちらが負ける。




 そこでこの暑い最中(さなか)である。寺や櫓の方へ引かれている水の手を断てば、のどの渇きが彼らを襲う。人間はどんなに強がっても、水と食べ物がなければ生きていけぬ。そして……弱まったところを攻撃する。


 水源を探すのは簡単だった。寺の(ぬし)津軽家(つがるけ)二柱(にはしら)乳井(にゅうい)(たけ)(きよ)であるし、その家来衆らも水の出どころを知っている。逆に安東軍は水源の在処がどこかなど知る由がなく、場所がわからないので兵を置いて守ろうにもできぬわけだ。拠点の裏に広がる大館山(おおだてやま)へ密かに分け入り、たいそう虫に刺されてむず(がゆ)いのを我慢しつつ……(やぶ)の向こうに岩の狭間から湧き出る源があった。その先にはある程度大きい貯水池があり、そこから福王寺や乳井にゅうい茶臼館ちゃうすかんへと水を流している。


 それを……ぶち壊す。木の板で作られた境目や、竹筒などを思うがままに割る、壊す。これまでの仕返しだといわんばかりに滅茶苦茶(めちゃくちゃ)にしつくす。池には周りの土をいれて水を濁らせる。……あっという間に泥の沼の如く、足を入れればそのまま沈んでいくような、そのあたりだけが(はえ)(あぶ)がブンブン飛び交い……すでに水溜めの役割は失われた。それも完全に。相当な時間を費やさねば……元には戻らぬ。



 乳井茶臼館

https://18782.mitemin.net/i324235/

挿絵(By みてみん)



2018/02/15  挿絵に関して


出典元:特集 津軽古城址

http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/castle.html

鰺ヶ沢町教育委員会 教育課 中田様のご厚意こうい(あずか)りまして掲載が許されております。小説家になろうの運営様にも、本文以外でのURL明記の許可を得ております。


光信公の館

〒038-2725

青森県西津軽郡鰺ヶ沢町大字種里町字大柳90

http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/

TEL 0173-79-2535


鰺ヶ沢町教育委員会 教育課

〒038-2792

青森県西津軽郡鰺ヶ沢町大字本町209-2

TEL 0173-72-2111(内線431・433)

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