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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第一章 北畠残党、秋田へ向かう 天正六年(1578)晩秋
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限界 第一話




 皆々疲れ果て、笑う者は誰もいない。横内(よこうち)城の近くに作られた急ごしらえの長い小屋。それも粗雑なものなので、風の音がビュービューとうるさく、夜など途轍(とてつ)もなく身震いする。


 ……そのうち一人の婆が叫んだ。言葉に現せぬ、何物にも形容できぬ。


 皆が近寄ってみると、藤蔵(ふじぞう)と呼ばれる年寄りが看病の甲斐なく息絶えている。灯で照らされた(つら)は紫。……滝本の暴力を受けた後数日ずっとこのような状態であったが、とうとう死んでしまった。






 ある若者が立った。


「……もう我慢ならぬ。滝本め……浪岡衆を何とするつもりだ。」



 慌てて他の者が座らせにかかる。……どこで誰が聞いているかわからない。しかし続いて他の者も口を(ひら)きはじめた。


「奴は“浪岡を取り戻せ”とばかり言うが、為信憎しで動いているだけ。我らのことなど考えておらぬ。」


「そうだとも。それに浪岡を取り戻そうと戦おうとすれば、あちらにも見知った者は大勢おる。肉親で殺しあうことになる。」




 他の者も“そうだそうだ”と同意する。そのまま為信に従った民もいれば、こうして逃げてきた者もいる。








「ならば……我らはどうする。」




 一人がこういうと、急にその場は静まりかえる。……明確な答えを出せぬ。




「用があり油川に戻った御所号がおっしゃるには……奥瀬(おくせ)様は我らが事を考えているらしい。」


「というと?」


「……遠方に新しい土地をあてがい、浪岡衆をそちらへ移すと。(そと)(がはま)から離してしまえば、さすがに滝本が付いてくることはないだろうと。」




「それはあくまで……その場しのぎの発言では。何かしてくださるのであれば、奥瀬様が直接滝本に言えばいい。結局、奥瀬様は奴に何をすることもできぬ。」


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