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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第七章 安東軍、乳井茶臼館に籠る 天正七年(1579)旧暦七月八日
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流転 第三話


「津軽家中の話ではそうなっとる。乳井(にゅうい)とかいう奴が出羽の羽黒山(はぐろさん)と交渉を持ち、酒田(さかた)大宝寺(だいほうじ)を動かした。大宝寺が北へ兵を向けたので安東(あんどう)(ちか)(すえ)は警戒のため津軽には入らぬ。」



 顕則(あきのり)石堂(いしどう)にとっては想定外のことだ。椅子を立つまではしないが……目が点になるとはこういうことなのだろう。石堂は尾崎に問う。


「確かに我らの中でも……大宝寺の動きが怪しいので、少し間をおいてから安東本軍が参ると聞いていた。それもそろそろ着くのではないかという見込みで……我らも滝本も動いていた。」


 尾崎は再びため息をついた。



「参らぬどころか、引き返すつもりぞ。大館(おおだて)扇田(おうぎだ)(じょう)にいるのもあと少しだ。」





 少しだけ冷や汗が。小雨も降っているし夏なので蒸し暑い。肌に水滴の流れる感触がまじまじとわかる。


「とにかくだ。勝つ見込みがない限り水木御所としては、とてもじゃないが為信を裏切れぬ。」



 言葉なんてでるはずがない。それでも何か返さねばならぬ……。彰則は固まったままなので、石堂が話すしかない。


「ならば……安東が負けるか。」



 尾崎はというと“いや……”と言葉を濁しつつ、知っている限りのことをは伝える。


「もちろん水木御所が為信に付いたままだとしても、お前たちと刃を交えるつもりはない。もし安東が負けてもお前らが生きていれば……さすがに御家門(ごかもん)ゆえ、殺されることはないだろう。我らもとりなしを願うつもりだ。」


 二人は神妙にして聞き続ける。



「だが……我らの仲を勘付いているのか、それとも偶然なのか。沼田(ぬまた)とかいう為信の傍付(そばつき)の進言で、ここ高畠(たかはた)館へ水木御所の軍勢が差し向けられることになった。……お前らはこの意味をどう(とら)える。」


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