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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第七章 安東軍、乳井茶臼館に籠る 天正七年(1579)旧暦七月八日
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戦さのやり方 第四話


 爆音が茂みの中より響いた。突然の事態に安東軍は慌てふためき、しかも暗闇の中なので同士討ちもあっただろう。大将の比山(ひやま)などは……大柄な体をのけ反らして地べたに腰を落としてしまった。痛い痛いと横の浅利(あさり)の足元を手に掴む。浅利もいやいやながら……その醜態しゅうたいを憐れみつつも、声をかけて肩を貸した。やっとのことで立ち上がると……目前に敵兵三人が迫ってくる。慌てふためく味方の兵らは彼らを止めようともせず、呆然としてこちらを見るだけ。黙っているだけならば助けろよと浅利は言葉を投げ捨て……比山をもその場へ捨て置き、(こし)(がたな)を抜いた。


 “ヤーッ”と途轍(とてつ)もない怒鳴りで叫び、三人をあろうことか一人で始末すべく自ら敵に迫った。その様を見ていた味方の兵らは”はっ”と気づき、慌てて助太刀しようと浅利の元へ駆けた。……ちなみにこの時、地べたに()いつく比山に誰も気づいていない。浅利はというと誰の助けも要らぬと言っているかのように、軽やかな身のこなしようで攻める三人を翻弄する。そして隙を突き……横腹が開いたかに見えれば胴の境目めがけて刃を入れるし、向きをこちら側に変えようとするものなら足元に蹴りをくらわし、その勢いのまま倒れたその敵兵の首をとってしまう。残る一人は……対面するも、すでに恐れしかみえぬ。そんな相手ならばと至極簡単に討ち取ってしまった。前へ進み出て、刃を交え……力づくで手にもつ刀を落とさせ、無防備な胸中に刀を突きさすのだ。……誰の助けも要らなかった。味方の兵も安堵し、浅利の元へ寄ってくる。




 すると遠方より怒声が響き、それを合図として沖舘の砦へ向けて鉄砲の撃ち込みが始まった。……滝本め、お主ら周辺はすでに収まり、さっそく反撃を始めたか。負けてはおれぬと浅利も周りの兵らを従えて砦へ攻めかかる。堀を下り、柵を超えようと何百人も進む。


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