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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第七章 安東軍、乳井茶臼館に籠る 天正七年(1579)旧暦七月八日
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戦さのやり方 第三話


「死ぬのが遅かれ早かれむざむざと死ぬより、朝を待つよりは今すぐ攻め入りなされ。それでこそ私たちはあなた方を男だと思いますよ。」



 “なんだと”と男ども。しかしもっともすぎて何も言い返せない。その様を見ていた館主の阿部(あべ)は黙って聞いていたが……このまま何もせず殺されるのは不本意だし、男として見られないまま死にたくもない。いかにもあの世でも(ののし)られそうで……少しぐらい恰好(かっこう)つけて死んだ方があちら側でもチヤホヤされるだろう。そこで阿部は乗せられやすい性格でもあったので、大声で女たちに言い返した。


「よーし。お前らにも鎧兜を貸してやる。我ら男どもが外へ攻めている間、女たちは館を守っておれ。落とされることは許さんぞ。」



 言葉の中に怒りという感情はなく、どちらかというと華々しく散ってやろうという気勢であったし、もし……もし運が良ければ夜霧に紛れて敵将を討ち取れるかもしれぬ。


 女たちは明るく、無理やりさらに快活に応えた。


「やってやろうじゃないですか、館主様。落とされるはずがありましょうか。“ついで”にたいそう美味しい物をお作りしてお待ちしております。」



 男女(おとこおんな)共に一致団結し、先ほどまでの自らを憐れむ雰囲気を消し去った。ただし勝つためというよりかは……また別の理由だが、それでも一つ動きをとってみても全く違うし、顔色も輝かしく光っているかのようだ。月明かりに全てが照らされいるので、すべてがわかる。沖舘の砦は幾多もの(しかばね)に囲まれており、いずれああなるとはわかっているが……これより積極的にその状態を求めに行く。そんな(いびつ)な行為、無謀に近い、ほぼ意味はない、それでも理由は作りだせた。

 館主の阿部を筆頭に、残る男ども四十数名を(よう)し安東軍の目前まで迫る。茂みの中に隠れ……タイミングを(はか)る。そして残りの弾と火薬を鉄砲に仕込み、暗闇の元……突如として安東軍へ向けて打ち鳴らした。


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