戦さのやり方 第三話
「死ぬのが遅かれ早かれむざむざと死ぬより、朝を待つよりは今すぐ攻め入りなされ。それでこそ私たちはあなた方を男だと思いますよ。」
“なんだと”と男ども。しかしもっともすぎて何も言い返せない。その様を見ていた館主の阿部は黙って聞いていたが……このまま何もせず殺されるのは不本意だし、男として見られないまま死にたくもない。いかにもあの世でも罵られそうで……少しぐらい恰好つけて死んだ方があちら側でもチヤホヤされるだろう。そこで阿部は乗せられやすい性格でもあったので、大声で女たちに言い返した。
「よーし。お前らにも鎧兜を貸してやる。我ら男どもが外へ攻めている間、女たちは館を守っておれ。落とされることは許さんぞ。」
言葉の中に怒りという感情はなく、どちらかというと華々しく散ってやろうという気勢であったし、もし……もし運が良ければ夜霧に紛れて敵将を討ち取れるかもしれぬ。
女たちは明るく、無理やりさらに快活に応えた。
「やってやろうじゃないですか、館主様。落とされるはずがありましょうか。“ついで”にたいそう美味しい物をお作りしてお待ちしております。」
男女共に一致団結し、先ほどまでの自らを憐れむ雰囲気を消し去った。ただし勝つためというよりかは……また別の理由だが、それでも一つ動きをとってみても全く違うし、顔色も輝かしく光っているかのようだ。月明かりに全てが照らされいるので、すべてがわかる。沖舘の砦は幾多もの屍に囲まれており、いずれああなるとはわかっているが……これより積極的にその状態を求めに行く。そんな歪な行為、無謀に近い、ほぼ意味はない、それでも理由は作りだせた。
館主の阿部を筆頭に、残る男ども四十数名を擁し安東軍の目前まで迫る。茂みの中に隠れ……タイミングを計る。そして残りの弾と火薬を鉄砲に仕込み、暗闇の元……突如として安東軍へ向けて打ち鳴らした。




