戦さのやり方 第二話
傾斜を駆け下がってきた兵らは銃弾に倒れ、あとは転がる石のように下へ落ちてゆくだけである。あとは影が否応なく黒く、いつしか日も沈んだのでそれすらなくなった。誰か敵兵がそこを歩めば、ただただ鈍い物体として踏みつけられるだけ。
滝本は下から斜め上に向けて鉄砲を狙い撃ちさせた。さあこちらにも同じものがあるぞと言わんばかりに柵の向こう側へと何度もきりなく攻撃した。安東軍の弾薬はたいそう豊富で、鉄砲の数こそ五十丁ほどしかなく、その場にいる兵が千も超えていることを考えれば少なく思えるが、沖舘に籠る将兵の持つたった五丁と比べれば問題にならぬ。
いつしか弾や火薬が尽きかけ、沖舘の内側から響く爆音はなくなった。……夜も深くなったので手を緩めたのか、安東軍のほうでも鉄砲の音は鳴りやんだ。兵が攻めてくることもなくなり、一応は敵味方互いに血の通った生き物であるので、ある程度体を休めねば何もできなくなる。……おそらく戦さが始まるのは明日の朝だろう。すでに沖舘に籠る兵らには悲観しかない。男どもは顔を下に向け、鍋に煮立つ水団を碗にいれて何も言わずに食べている。松明は手元が見えるくらいのみ明るくするだけ。侘しい、何とも侘しすぎる。これが果たして最後の晩餐になろうものなら……他にも食い物はあるだろうからと共に籠る女房や砦の女中らに詰め寄るのだ。
すると男どものこんな姿にあきれ返った女たち。そんな心構えでは負けてしまうぞと要求をはねのけてしまった。普段は従順でかわいらしいのに……どうしたことかと問いただすが……。
「ならば私たちにも鎧と武具を。そんな気の持ちようでは勝つ戦さでも負けに行くようなもの。」
何をぬかすか。男どもはカッとなり、とはいえ殴るわけでもないが苛立ちを一切隠さぬ。女たちも言いたいことを悉く話しだす。




