戦さのやり方 第一話 +沖館絵図
矢は尽きることなく下より放たれ、高々と上がり、大いに降り浴びせられる。周りは濠で囲まれ、それが途絶えているところは足場の悪い湿地帯になっているが、それをものともせず安東軍は攻め寄せてくる。敵に勢いはあり、この沖館も落ちるのも時間の問題……。誰かが叫んだ。
「おい、援軍はまだか。」
「一向に見えませぬ。」
大声を立てなければ聞こえぬ。けたたましく、周りは武具のこすれる音や空気が鳴る音、痛く痛くもがく叫び。小さな砦なれどそこには生きている人が守っているし、守りきらねばならぬ。ここを落とされれば敵軍はきっと大光寺城へ。きっと土民も参加し攻めたてることだろう。
いつしか湿っぽい空気が抜けて、小雨は降らなくなった。敵味方泥まみれに争っていたが、肌に付く土は乾き、それだけ長く砦を守り切れていたともいえる。厭戦ぎみとも思えたが……この状況の変化により、ある手段が使えるようになる。
行き着く先を見定めて……黒い筒は下方を向く。ジリリと焦げ付く音を立て……敵方目がけて弾は飛んだ。辺りの者らは誰とも関係なく動きを止め、何が起きたのかと思わず見回してしまった。しかしすぐに理解する。田舎武士といえどもすでに鉄砲を見たことがない者はいない。それはたった五丁ながら大変な威力を発揮し、もう少しで柵を抜けようとよじ登った者も含めしっかりと撃ち落した。
これまでは湿っぽく用が足りなかったが、日が暮れ始めてやっと使えるようになった。よし、これでもう少しだけ粘れるぞ。……粘れるだけか、ならば結局は死ぬのか、少し生きるのが長くなっただけで。いやいや援軍が来るまでの辛抱ぞ。どれだけ傷を受けようとなんのその、それ音でひるんだうちにこちらからも攻めかかれ。引けを取らせてはならぬぞ。……すると、まさかあちらからも爆音が響いた。
沖館
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2018/02/15 挿絵に関して
出典元:特集 津軽古城址
http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/castle.html
鰺ヶ沢町教育委員会 教育課 中田様のご厚意に与りまして掲載が許されております。小説家になろうの運営様にも、本文以外でのURL明記の許可を得ております。
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