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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第六章 津軽為信、出陣する 天正七年(1579)旧暦七月七日
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遠謀 第四話


 誰かが“袋の鼠”と申せども、敵軍の方が兵数で上回り、かつ勢いもある。安東軍はいまや大鰐あたりの土民も併せ二千近く。対してこちらが自由に動かせる兵は千ほど。水木御所を併せても千五百なので、非常に心もとない。しかも()目内館(つめない)多田(ただ)(ひで)(つな)は果たして降伏してしまったのか否か。動きが全くもって見えぬ。



 為信は悩む。肝心なのは用兵であり、そこをしくじればすべて水泡(すいほう)に帰す。ひとまずは……


「森岡。お前は五百で森山(もりやま)松伝寺(しょうでんじ)を奪還し、安東軍の退路を塞げ。余裕があれば宿河原(しゅくかわら)に進み、平川(ひらかわ)六羽(ろくわ)(かわ)の要所を抑えろ。」


 森岡は威勢よく返事し、甲冑の音を鳴らしながらその場を去った。次に……



「乳井。お主は大光寺城へ向かい、攻めたててくるだろう安東軍を迎え撃て。これぞ復讐の致すところだ。」



 乳井はというと……“御意(ぎょい)”と大きく返したものの、心の中でいろいろと渦巻いているようだ。なぜならば迎え撃つだけでなく、今すぐにでも福王寺ふくおうじを取り戻したい……それに攻めたてられている沖館(おきだて)高畑(たかはた)も自らの所領でもある。


 横でそれを至極冷静な目で見ていたのは沼田(ぬまた)祐光(すけみつ)。実はこの戦に関してある疑いを持っていたので……ここで(うやうや)しく前へ進み出て、為信に対して献策する。




「殿……迎え撃つだけでは敵軍の勢いをそぐことはできません。出口をふさぐのも結構。しかし他の手も加えると……さらに良策。」


 為信は沼田の目を見て……何か裏がありそうな感じを受ける。周りの諸将が血気にはやる中、落ち着いて入れる数少ない一人である。……そういえば、こやつも純粋な津軽(つがる)(しゅう)ではなかった。



「沖館には乳井殿が大光寺(だいこうじ)(じょう)へおつき遊ばしたらさっそく援けに向かって頂く。高畑へは、北畠きたばたけには北畠を。水木(みずき)の軍勢に当たらせましょう。」


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