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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第六章 津軽為信、出陣する 天正七年(1579)旧暦七月七日
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旧拠大光寺へ 第二話

 滝本(たきもと)は地図の広げてある机をたたき、周りの諸将へ物申す。


「それでも安東様がやってくるのは変わりなかろう。」



 大将の比山(ひやま)は滝本の剣幕に戸惑いながらも、“そうだな”と相槌をうった。滝本は続ける。



「我らは大鰐(おおわに)まで制した。羽黒(はぐろ)館の将兵は逃げ、()目内(つめない)館の多田(ただ)とは繋がっている。加えて津軽家中にも裏切る約束の者らもおる。安東本軍がやってこないからといって、攻めない理由にはならんぞ。」






 場の空気は滝本一色になりかけた。いやいや、なってはならぬと慌てて目付役の浅利(あさり)が口を挟む。


「しかし我らが総出で攻めあがったとしても、帰り道を(ふさ)がれては兵糧が届かなくなるぞ。」


なんだとと滝本は浅利をにらみ、強い押しで言い放つ。


「そんなもの、まだ未だに戦っていない北畠殿に守ってもらえばよい。ここ宿河原(しゅくかわら)にて居座れば、道が断たれることはなかろうて。そうであろう、北畠殿。」



 北畠(きたばたけ)顕則(あきのり)は滝本の真ん前にて座っていたが、まともに口答えができず、目を合わせないように下に俯こうとする。ここで浅利が擁護する。


「その言い草はないだろう。北畠殿は多田をこちらにつかせた立役者。無駄な血を流さずしてほぼ大鰐地域を下したのだから。」


「戦ってこそ武士の本懐。なるほど、裏でコソコソやるのも私もやるだろう手だし立派な策謀だ。だがそれだけに頼って刀を持つことを忘れたから、浪岡北畠の凋落(ちょうらく)があった。それとも……次の戦は先陣を切るか。」



 北畠家臣の石堂(いしどう)は恐る恐る顕則の顔を窺うが、体が少しだけ小刻みに、次第に揺れが大きくなり……彼には似合わないがたいそう甲高い声で言い返した。



「わかった。次の戦では先陣を切らせていただく。それでよいであろう、滝本殿。」


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