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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第一章 北畠残党、秋田へ向かう 天正六年(1578)晩秋
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受難 第四話


 空は雲でほぼ覆われ、それでも隙間からは日差しが垣間見られるが、まったく嬉しくない。少し肌寒く、収穫の季節ではあるが北国はすでに()える。それにここは油川よりも山側、南風といえど八甲田という雪の積もる処より吹き下ろされるので、感じるところはなおさらだ。


 浪岡衆の集められた横内(よこうち)という場所はこのようなところある。元は(つつみ)氏の居城があったが、堤氏は大浦(=津軽)氏と血縁があったために、為信決起時に疑われ誅殺された。そのあとは油川の奥瀬(おくせ)氏が管理していたが、このたび滝本たきもと重行しげゆきの奉じる大光寺氏の遺子が代わりに城主として入った。(つつみ)氏と大光寺(だいこうじ)氏は元をただせば同族であったようで、滝本はその点をうんと言わせて無理やり我が物とした。横内の城についてはもう一波乱あるのだが、これは後の章に譲る。



 とにかく今まで無縁だった寒い土地に集められた浪岡衆。見る限り手前の山にはマツやブナなどが生えているので、そこへいけば寒さはしのげそうだ。しかし今いる平野部は特に土地が固く、はっきりいって不毛の地に近い。小川は近くに流れてこそいれど、水を引き入れて田畑にできそうもない。なにより“魚”が泳いでいない。当時の人にはわからなかったろうが水源には酸性泉がわき出て、それもそうだろう()(かゆ)温泉など今や全国的に有名だ。



 このような様を初めて見た人ならば……呆然としてしまうだろう。ただし平野部はひたすら灰色の土地が広がっているので(たまに草が生えているだけ)唯一、軍事演習を行うにはもってこいだ。


 ……滝本は采配を振り下ろす。浪岡衆……浪岡から逃げてきた避難民らは掛け声をあげて、“仮想敵”めがけて突進する。槍や刀を持って向こう側の木の棒まで。1kmほどを全力で走らされる。(ゆる)もうものなら叱咤(しった)されるだろう。恐怖と隣り合わせ。





……そのうち雲が、黒くなり始めた。


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