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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第四章 津軽為信、和平を探る 天正七年(1579)田植前
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久慈義勇軍 第五話

 為信は問う。“息災であったか”と。当然弟もすぐさま“息災でございました”と応えた。そして二人が額を当てあって、少しだけ笑いあうのだ。






 その様をみた家来衆の一人、森岡(もりおか)信元(のぶもと)は一番の声で叫んだ。


「これで我らの勝ちは見えた。このたびの戦さ、我が方の勝利だ。」



 皆々呼応して、それぞれが雄叫おたけびを上げた。すべてを覆い隠すように、真実をわざと見ぬように、来るべき結末より背けるために。


 その様を見て、為清は少しだけ顔を引きつらせた。なにか違うものを感じた。“勝ちだ勝ちだ”と言ってはいるものの、その裏に悲惨な何かが感じることができる。……もしくは、気のせいか。すると為信は小さ目な声で為清へと話す。


「お前は津軽衆ではない。そこだけが救いだ。」


「……と申されると。」


おのれも津軽の出ではないのだが、長く住むことで津軽に染まってしまった。突き進むしかないのだ。」




 哀しそうに弟へ伝える。為信の後ろではいまだ声を上げあう家来衆ら。為清は……動揺を隠しながらも、できるだけ落ち着いて兄へと話す。


「……このたび我らはおおやけの軍勢として参ってはおりません。九戸様は安東との繋がりを断たれ、南部の殿が動いたところで足止めができない。それでもと信義(のぶよし)の兄上が弟を助けようと、我らを津軽へと送ったのです。」


 為信は静かにうなずいた。最後に助けになるのは血縁なのか。遠く離れているところで暮らしていても、敵方になってしまっても、思いやる心は忘れぬ。




 であればなおさら、負ける戦さに弟をだすのも気が引けてくるのだ。為清の姿を見て……為信は戸惑う。それは男の(うるさ)い声の中での一コマであった。


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