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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第一章 北畠残党、秋田へ向かう 天正六年(1578)晩秋
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受難 第三話

 しかし北畠家臣からするとたまったものではない。浪岡衆の滝本嫌いは甚だしく、それは彼の強圧的な行いによる。……確かに彼は武勇知略に優れ、宿敵為信に打ち勝ったことがある。その手法を直々に学ぶことができるのならばすばらしい。


 だがそれで浪岡は守れたか?かえって内部に混乱を招き、付け入るすきを与えたのではないか。民百姓をも巻き込んで軍事演習を行い、その徹底した(さま)で疲弊させた。老人には鞭打ち、泣く女子(おなご)にも容赦なく殴る。……為信を倒したいのは分かるが、明らかにやりすぎだった。手が赤いマメだらけでただれても槍を持たせ続け、弓を引く力がすでになければ、無言のままけとばす。……民衆からはこんな話が聞かれる。




 油川城内、北畠仮殿にて。悩ましげに浪岡衆が話し合う。


「なぜ油川に来てまで、あんなことをやらねばならぬのですか。」


「そうだとも。もちろん浪岡を取り戻すことは我らが悲願。力を付けることも大事だ。だが滝本のやり方はもううんざりだ。」



「……御所号!なんとかなりませぬか。」




 上座で腕を組んで考え込んでいるお人。彼こそが御所号と呼ばれるうら若き貴人、北畠(きたばたけ)(あき)(うじ)という。後に名を改めることになるが、今はあえて触れない。その顕氏とて何か防ぐ手立てはないものかと考えるものの、一切思い浮かばぬ。



奥瀬おくせ殿は……めたのであろう。」


「もちろんでございます。しかし滝本は聞く耳持たず。考えるのはひたすら為信を倒すことだけ。浪岡衆はたんなる一つの駒に過ぎませぬ。」



 ……近いうちに横内よこうちだいらに駆り出されて、我らは地獄を見る。前に比べても滝本の意気は相当だろうから、もしや戦う前に死ぬやもしれぬ。ああ、なんたることか。


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