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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第三章 安東愛季、津軽征討を決断する 天正七年(1579)雪解
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トサームを求め 第五話

 最近では……安東(あんどう)(ちか)(すえ)様は北畠勢も滝本(たきもと)重行(しげゆき)指揮下にいれて出陣させる心づもり。滝本指揮下に入れば……再びあの地獄のような日が始まる。そうさ、他の南部人らは主家を捨ててまで敵方である秋田へとはせ参じた。領地を取り戻そうという一心で。きっと滝本の調練を懸命に受けるだろう。そして屈強な兵となる……。


 だが北畠(きたばたけ)(あき)(うじ)の連れてきた者らにとってそれは地獄でしかない。苦しめられ、痛めつけられ、そうして油川から秋田へと逃げてきたのだ。生命の危機を冒してまで。それを何が楽しくて調練を受けねばならぬ。






 石堂頼久(いしどうよりひさ)はそんな顕氏に詰め寄る。


「あなた様が“北畠は滝本指揮下には入らぬ。私自ら北畠勢を率いて戦場へ向かう”と宣言しさえすれば、回避できること。それにこのままでは戦に勝っても、滝本の発言力が増すばかり。滝本に津軽を任せてはたくはないでしょうに。」








 ……顕氏は必死に悩んだ。そのうち不眠になり、夜と昼の区別などつかぬ。外が寒いのか暑いのか。きっと寒いだろうが、体が異様に熱いせいで、わけがわからない。


 ……疲れ果てて、とうとう寝床ではない廊下の脇でバタリと倒れてしまった。周りの者は慌てて彼を介抱し、力の失せた体を二人がかりで運んでいく。……数日動かないまま、目を覚ますことがない。ならば仕方ないと石堂は立ち、私が先頭で北畠勢を指揮すると愛季様に申し出ようかと城へと向かおうとした。その時……顕氏は目を覚ます。






 夢を見ていた。祖父が浪岡の独立独歩を唱えていたころを。あのころは南部の人形ながらも土地と人民が在った。いまはそれすらない……。顕氏は決断した。名前を変え、これまでの自分も捨てる。……浪岡を滝本の好き勝手にはさせぬ。


 祖父の名前は北畠(きたばたけ)(あき)(のり)。読みを同じくして顕氏より改め、北畠(きたばたけ)顕則(あきのり)と名乗る。先頭に立って、津軽の地に戻る。浪岡が誰にも左右されぬ日を目指して。


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