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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第一章 北畠残党、秋田へ向かう 天正六年(1578)晩秋
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受難 第二話


「もう私は限界だ。今か今かと待ちわび、だが一向に動こうとしない軟弱者よ。よくまあ大殿は(そと)(がはま)をあなたに任せられたものよのう。」



 当然ムカつきはするが、それよりも憐みの心やらなんやらと。人が見えすぎると周りの者が馬鹿に見えてくる。例えば今こうして奥瀬(おくせ)に対して罵りかける滝本(たきもと)という男。声は城内の広間にて響き渡る。知略武勇共に優れ、かつての戦では為信をも打ち破った名将であるものの。しかしながらこうして対していると、この男はとことん小者なのだなと感じられる。奥瀬は滝本に対して諭す。


「今や浪岡は為信によって治められ、堅く守られている。勝てる見込みもないのに攻め込んで、なんの得になろうか。」


「これは異なことを……あなたは南部代官として浪岡を守る役目であったはず。それを奪われたままで、何を語るのです。」



 ……確かにこれまでの経緯を追うならば、奥瀬は浪岡に対して役目を果たせなかった。だが大切なのは浪岡よりも外ヶ浜であり、津軽奥瀬両軍が激突すればどちらかが勝つまで争わねばならぬ。もし我らが敗れでもすれば……それこそすべての終わりだ。他の南部の猪武者とは違うのだ。




 全体を見よ、大局を想え。



 ただし奥瀬にも負い目はあった。滝本の不満もある意味で正しいわけで、もし滝本が浪岡に駐留したまま警戒にあたっていれば、浪岡はそう簡単には落ちなかっただろう。だが民衆は滝本の強圧的なさまを嫌がり、これでは南部氏への支持が離れてしまうと危惧した奥瀬は、無理やり浪岡より引きはがした。……そのあとで為信の侵攻を迎える。



 滝本はさらに声を荒らげる。


「もうあなたの同意を待てぬ。民の動員を得られぬでも、浪岡より逃げてきた者らは無為無用に生きている。彼らを借り受けさせていただく。彼らなら具合もわかっておろうし。」


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