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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第三章 安東愛季、津軽征討を決断する 天正七年(1579)雪解
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堤氏復帰 第三話

 兄妹して共に火鉢で温まり、庭の景色を楽しむ。これでは温まりたいのかそうでないのかわからぬ。だが妹の妙誓はわざわざ言い返さずに、そのままにしておいた。……すると上の方より静かに小雪が舞い始めた。妙誓はちらりと横の兄を見やるが、兄の奥瀬は何もしようとしない。とりあえずそのままだが……これでは風邪をひいてしまうと妙誓、突然立ち襖をすべて閉めた。


 奥瀬は妹の(さま)を見て苦笑する。

(たえ)……妙は変わらぬのお。」


 妙誓はわざと横向きで文句を言う。


「兄上こそ。大切な御身(おんみ)なのですから。」



 ため息をつき、再び兄の横で火鉢にあたりだす。すると奥瀬は火鉢の棒を妹に渡し、頭がかゆくなってきたので……少しだけさわり、手を櫛のように使って髪を整える。思わず少しだけフケが舞う。妹は(あき)れる。……兄とは違う方を見てみる。奥瀬はお構いなしにそんな妹に対して語りだした。


「今日は幽霊が出るぞ。」



 何を申しているやら。妹はそう感じるが、兄は話を止めるそぶりはない。


「このたび南部家の意向でな……油川、ひては(そと)(がはま)の秩序を回復するには、旧来の権力を持ってあたるのが一番良いと。」




 火鉢は少しだけ勢いを増した。


「故に、外ヶ浜代官の職に(つつみ)氏が復帰することになった。横内(よこうち)城主に戻る。」



 “えっ”と思わず妙誓。兄の顔を見るが……嘘をついているようではない。


「そうだろうの……。堤氏はあの津軽為信と縁戚。正確に言えば……大浦家の先代、大浦おおうら為則ためのりの娘が(つつみ)(のり)(あき)に嫁いだ。だからこそ為信が決起したとき謀反の疑いをかけられ……誅殺された。」



 はっとさせられた。“幽霊”の意味を。もしかして……私の本当に好きな人が……縁側より足音がする。


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