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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第二章 滝本重行、外ヶ浜より追放される 天正七年(1579)正月
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町衆の勝利 第二話

 年老いた住職が無理やりその場から追い出されそうになっているので、他の僧侶たちは慌てて町衆らを止めにかかった。しかし町衆らもすっかり酔っぱらっているので聞く耳を持たない。そのうちある一人が“住職の(らい)(えい)は滝本の味方をするつもりだぞ”と(はや)した。するとまともな判断をできなくなっている者ばかりなので、酔う者すべて騒然とした。笑顔だったものが怒りに変わり、その目線は頼英へと向けられた。……横の(ほお)に汗が流れる。






 そこへ一人の尼が突如として駆け込んだ。力ずくで町衆の座るのを押しのけて、紫の袈裟を両手で上げた状態で頼英の元へ駆け寄った。剣幕遥かに恐ろしく、周りの者に大声で怒鳴りつける。




「そんなはずあるわけがない。」



 ……辺りは静けさを取り戻した。……町衆とて、この人物には逆らえない。住職に手を出そうとも、この尼は……末恐ろしい。なぜなら彼女は領主である奥瀬善九郎(おくせぜんくろう)の妹なのだから。一度は他家に嫁いだが、性格に難があり戻された。それ以来円明寺に尼として入り、油川の信仰を守る。未だ若く、三十代の(なか)ばくらいか。しかしながら大人物としての風格を備え、町衆の信頼も厚い。名前を(みょう)(せい)という。……彼女は話を続けた。それも怒鳴りながら。




「住職を痛めつけようとするな。お前らは何者か。誰のおかげで無事平和に過ごせているとお(おも)いか。」



 誰もかも、(つら)を上げることができぬ。それは妙誓が城主の妹だからではない。言葉に力があるからだ。……すべての者が平静を取り戻し、彼女の一語一句を聞き逃さまいと耳を傾ける。住職が危ない目に合おうとするところを彼女の力で止めることができた。他の僧侶らも安堵する。






 しかし、その僧侶らも次の言葉には耳を疑った。妙誓は……同じ口調で訴えかける。


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