表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第二章 滝本重行、外ヶ浜より追放される 天正七年(1579)正月
15/102

次の標的 第四話

 雪の中、滝本の配下が一軒一軒訪ねるたびに噂が立つ。



“彼らは何用で家々を訪ね歩いているのか”


“なんでも、住居録でも作るらしいぞ”


“なぜ?これまでなくても、やってこれたではないか”


“なんでも……どれだけの人数を兵として出すことができるか調べたいらしい”



 油川あぶらかわの町衆、冬といえども行きかう人は絶えず、各々の商店へ物を買いに行くのはもちろん、噂を広めるのも得意である。家屋敷にフミグツ(雪用の靴)を脱いで上がれば、火鉢のそばで耳よりの話を語り合うのだ。




“話に聞けば、滝本とかいうやつは浪岡衆を(いじ)め切ったらしいぞ。何人かは船で遠くへ逃げたらしい”


“それはまことか、私が聞いたところでは逃げる途中で殺されたと聞いたが。




 本当の話に尾びれが付き、うその話も真実のように語られる。そしてしまいには滝本が大悪人のように語られ始めたのだ。



 ならばと町衆、滝本は我らに危害を及ぼそうとしているのかと思い、名のある大商人である小野善右衛門(おのぜんえもん)へ願い出て、滝本へ訊ねてみてほしいと頼んだ。善右衛門は快く承諾し、滝本のいる熊野宮へ茶器一式を持って参上する。それはとても寒い日の昼間の事、“これから良しなに”ということで善右衛門は滝本に(こうべ)を垂れる。すると滝本はこう問うた。



「うむ、せっかくなので武具の購入をお主よりしたい。弓や槍、鉄砲をいくらで売れるか。」


 善右衛門は商売用の笑顔のまま値について答える。

「はい。弓や槍はさほど変わらぬ値段でしょうが、鉄砲に関しては十石(じゅうごく)から。弾薬などは仕入れの量によりまする。」



 滝本はそう聞いた途端、険しい顔をしだした。

「……これはお前らを儲けさせるために聞いているのではない。油川を守るためでもあるのだぞ、鉄砲であれば五石で(おろ)せ。弾薬とて調練で大いに使うことになるのだ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ