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津軽藩起始 六羽川編 (1578-1580)  作者: かんから
第十章 南部軍、津軽氏を従属させる 天正七年(1579)旧暦七月十一日夜
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嘗胆 第四話


大浦(おおうら)堀越(ほりこし)を南部の直轄領とする。」



 奥瀬は二人の顔を見た。為清はさすがに心内を隠しきれず、哀れなごとく今にも泣きそうだ。沼田は……何を考えているか全くわからぬ。そこでさらに次の言葉を吹っ掛けてみる。


「こちらには山崎(やまざき)という北畠遠縁の者がおっての……その者を新しき御所号に()える。そこでお主らの水木(みずき)御所は無用だ。直ちに潰すがよい。」



 わざと為清を睨んで……こやつなら最後には許しを請うために(わめ)きながら額を地べたに付けるのではないかとも思った。沼田もさすがに顔を崩すだろう。そう考えて……二人を観察する。


 為清はしばらく言葉を返せず、喜怒哀楽という心の機微はすべて失われ、これでは役目を果たせぬと絶望に落とされたかのよう。……だが何かの拍子に目の色が変わった。闇に落とされていたのが、目に光が入った。月明かりが彼めがけて差し込み、星々のすべてが彼を応援しているかのよう。そうであったので奥瀬は思わず笑ってしまった。さすがは為信の弟、運命は彼に味方している。そして口を開こうとするが、それをあえて奥瀬はめた。


「まあまあ、そのような顔をなさるな。津軽のじょっぱりどもを我らとて治められるとは思わぬ。」



 ここで沼田は平坦な口調で奥瀬へ問う。


「あなた様を見ている限りでは……殿は生きておいでですな。」


「さすがは為信の(ふところ)(がたな)。我らが浪岡を囲んでいたせいで、六羽(ろくわ)(かわ)の結末が入らなかったのだろう。そうだ、為信は生きている。戦に勝利して、安東の兵共は逃げ去ったぞ。」



 沼田はその話しを聞いて、少しだけ……口の横を崩した。奥瀬もこれまで床几椅子に正しく座っていた身を崩して、片膝に片腕をあてて、片手で頬をつく。笑みを浮かべながら為清と沼田に対し“実務的”な交渉をしだした。


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