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悲劇2 美少女リーディア

 翌日、ライリーは普段どおりに学校に行った。ライリーはフォーゲル家のひとり娘だ。昔は神殿で、アウィス教について学んでいた。

 アウィス教は唯一神アウィスをあがめ、他者に対する思いやりや寛容を大事にする宗教だ。王国では過去、アウィス教のみが信仰を許されていた。

 しかし今、クンツ国王はアウィス教を国教として優遇しつつ、ほかの宗教の信仰も許している。ライリーの父母は、クンツに反発しつつも従っている。アウィス神殿の聖職者たちもそうだ。

(これからの時代、アウィス教と同じく、ほかの宗教も勉強しなくてはならない)

 ライリーは子どもながらに、そう感じた。なので十二才のとき、王立学校に入学したのだ。学校では、生徒たちは好きな授業だけを受講する。政治、経済、算術、農業、薬学、医療など授業は多岐にわたる。

 ライリーはエルマーと結婚するはずなので、商売に必要なものも学んでいる。そのことをエルマーにも伝えている。ところが彼は、興味がないようだ。結婚する気がないようにも思える。ライリーはむかむかして、扉を開けて教室に入った。

(エルマーは何を考えているの? ばか、変態、大っきらい!)

 するとひさしぶりに、ある顔を発見した。赤みがかった金髪を持つ、十七才の少年ラルスだ。前国王オーラフの息子で、今はエーデン子爵家の養子になっている。権力をほとんど奪われた元王子だった。

 ラルスの周囲には、取り巻きの貴族の少年が三人いる。今の国王の世で落ちぶれている家の子どもたちだ。ライリーは、彼らとは遠くの席に座った。

 テンス教などの信仰が許されるようになったのは、ライリーが四才のときだ。それ以来、アウィス教の影響力は弱くなり、テンス教が力を強めていった。ライリーの父母を始めアウィス教関係者たちは怒った。

(そんなときエーデン子爵が秘密裏に、私とラルスの婚約を持ちかけてきた)

 クンツに不満のある者同士、仲よくしよう。クンツを追い落とし、ラルス国王の世にしようというわけだ。

 ライリーの父母は心が動かされた。ラルスが国王になったら、テンス教などの異教を禁止するという。しかし途中で、婚約話がクンツにばれた。父母はクンツを恐れ、婚約を断った。

 ライリーは幼かったので、この騒動を覚えていない。けれど王立学校入学前に、父母から教えられた。婚約を断った両親の判断には感謝している。そして学校でも、ラルスとは距離を取っている。なぜなら彼には、好感が持てないからだ。

(ラルスの境遇には同情するけれど、彼は卑屈ね。クンツ国王の悪口を言うだけで、王位を取り戻そうとする気概もない。勉学も武芸も駄目と聞く)

 ライリーはさめた目で、ラルスと友人たちを見つめる。すると急に、教室の後方が騒がしくなった。ライリーはけげんに思って、振り返る。

 銀に輝く長い髪、神秘的な紫の瞳。きゃしゃな体つきで、ふわりふわりと歩いている。とんでもない美少女が、教室の後ろの扉から入ってきたのだ。こんな美少女は今まで学校にいなかった。もしもいたら、絶対に気づく。

「あれは誰?」

 ライリーは誰にともなくたずねた。あんな美少女に興味を持つなというのは無理だ。教室の生徒たちはみな、彼女にみとれている。ライリーも目が離せない。

「昨日、入学してきたリーディアだよ。昨日から、すごいうわさになっている」

 誰かが質問に答えてくれた。リーディアは何かを探すように、教室を見まわした。しかし見つからなかったらしく、つまらなさそうに視線を下げる。うっとりとするような微笑を浮かべて、後ろの方の席に座った。

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