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シャスティング 犠牲になるのは私を愛してくれた人?  作者: 魔神スピリット
第一章

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第35話 シオンの本気とサーシャの執念

 ようやく、頭のクラクラが治まってきたよ。


「君は”スキルコピー”を使用しないのかい?」

「私には必要ない」


 ワルツに装備させたレジェンドウェポン、”ルドラ”の力でなんとか押さえ込む事は出来た。おかげで”並列思考”をエメラルドからコピー出来た。

 クラクラが治まったことだし、そろそろ本気を出すかな。


 刃の付け根に三つの頭が付いた古めかしい槍、ルドラを頭上に掲げる。

 ルドラの”風操作”で”暴風”によって発生した風を操り、圧縮して上空から叩きつける。


「ダウンバースト!!」

「エア!」


 サーシャにエアが覆い被さり、身体を金属に変えていく。

 風の爆撃がエアに直撃する。


「お見事!僕の大技を初見で防ぐなんてね」

「・・・今のは、皇女殺しの・・・貴方が、あの()()()だったのですか」

「さあ、どうかな」

 

 なんだ、初見じゃなかったのか。

 向こうの世界で生きると決まった以上、その件には触れないで貰いたいんだよね。固金達に迷惑が掛かっちゃうから。


「”皇女殺し”が相手となれば、エメラルド様を助けに行く余裕は有りませんね」

「サーシャ、あまり僕を”皇女殺し”と言うと、本気で殺しちゃうよ」

「あの変態ぶりが嘘であったかのように、良い殺気を放ちますね、”皇女殺し”」


 僕の忠告を無視したね。


「まず、そこのトカゲから殺す!テンペスト!!」


 ハリケーンがサーシャ達に直撃する。

 再び”鋼鉄化”で身を守るか。芸が無いな、サーシャ!


「ダウンバースト!ストームクラッシュ!!」


 上空から再び風を叩きつけ、今度は、八方向からランダムに風をぶつける


「スキルの発動にも魔力を消費するはず。何故、これ程の威力を何度も・・・」


 大技を連発していることに驚いているらしい。

 マスターが装備している”霊樹の木刀”のおかげなんだけどね。おかげで魔力を使ったそばから回復していく。


 金属化していたトカゲの身体に亀裂がしょうじる。


「これで決める!エアスパイラル!!」


 螺旋状に渦巻く風の槍がサーシャの駒の背中を貫くと同時に、胸を押さえたサーシャが、斧の先端をこちらに向けながら走ってくる。


「ぐあ・・・ああ・・ああああ、ドラゴンブレス!!」


 クソ!大技の直後で、完全に動きが止まっている所に。


 サーシャの駒が消滅するのと、ワルツの右翼が貫かれたのは同時だった。


 幻痛がキモチイイ!

 でも、今はマスター達に勝利をプレゼントしないと。

 快感よりも、マスターから幸せを感じたいからね!見詰められるだけで蕩けてしまいそうな、あの感覚が堪らないんだ!


「メダルを使用!身体強化!メダルを使用!腕力強化!メダルを使用!脚力強化!」


 ワルツが墜落してから体制を立て直すまでの間に、サーシャは全てのメダルを使い、カードで自身を強化する。


 使ったカードは、全て時間制限無しの強化系カード。制限時間がない分、強化値は微々たるものだが。


「”逆鱗”発動!!」


 マズいな、サーシャからオーラのようなものが吹き出ると、僕の”危機察知”スキルが激しく警鐘を鳴らす。


「メダルを使用!ヘビープラス!」

「無駄ですよ。”逆鱗”を発動すると、全てのカード効果を受けなくなります。発動前に受けた効果は別ですが」

「つまり、僕はメダルとカードを無駄にしたという事か」


 直接作用するカード効果は効かない。逆に言えば、サーシャがカードを使えたとしても、自身に対して使用できなくなったということか。


 その時、エメラルドとマスターの決着が着いた。

 勝ったのは、当然マスター。

 

「よくも・・・よくも母様を!!」


 サーシャが僕を睨む。


「まずは、お前からだ!!」


 サーシャが振るう斧を、ワルツにルドラで受け止めさせる。

 重い!

 ”怪力”を持つワルツは、進化駒の中でもパワーは上位のはずなのに!サーシャの力は、ワルツを遥かに上回っている!


 力任せに振るわれた斧によって、ワルツの手からルドラが弾かれる!


「死ねええええええええええ!!」


 顔に執念が張り付いているよ。怖い怖い。

 ワルツの身体が真っ二つになる。


「これで、一人は脱落。後は金髪の女を」

「僕をなめるなよ、サーシャ」


 マスターの一番大切な人に危害を加えようだなんて、絶対に許さない。


「メダルを使用!”退化”!」


 最後のメダルを使用し、消滅しかけていたワルツが、進化前の鷹の駒の姿に戻る。

 損傷も全て無くなる。進化駒だけが持つ”退化”のスキルの効果。融合駒には無い利点だ。


「今更、通常駒などに・・・」


 ワルツにサーシャの身体を掴ませ、限界高度まで上昇させる。


「離せ!何をする気だ!」


 必死に藻掻くサーシャ。ワルツの”握力”のおかげでなんとか離さずにいられる。

 君が、僕を怒らせたのが悪い。


「今回のシャスティング、本当にチーム戦で良かったよ!心置きなく身を切る事が出来る!!」


 頭からの垂直落下。全速力で地面に向かう。


「ヤメローーーーーーー!!!」


 最後にサーシャの声が、耳にこびり付いた。



⚫⚫⚫        ★



 シオンの捨て身の攻撃によって、サーシャは敗北した。

 エメラルドとサーシャの現し身を破壊したことで、俺達の勝利でシャスティングは決着した。


 シャスティングに参加した面々をいたわった後、待機室で待っていたルーザを呼んだ。

 今は、気絶しているシオンとサーシャが起きるのを待っている。


『これが、報償の融合石と”強奪の杖”だ』


 マテリアから受け取った融合石は菱形の黒光りした石だ。

 強奪の杖の方は、長さ三十センチ位の黒い棒だった。先端に、スキルクリスタルに似た白い石が付いている。

 

『奪いたいスキルを思い浮かべながら、杖を相手の身体に当てれば、クリスタルとなって、身体からスキルが排出される』

「使用回数は?」

『お前達の世界でなら、何度でも使えるようにしておいた。次のシャスティング時には返して貰う』

「分かった」


「固金さん、シオンさんが目を覚ましましたよ!」


 マリアの嬉しそうな声に振り向くと、ぐったりとしたシオンが頭を押さえていた。


「大丈夫か?シオン。頭が痛いのか?」

「大丈夫だよ、マスター。少し変な感覚がするだけだから」

「無茶をしたな。だけど、良くやった。今夜はエビフライにしてやるからな」


 シオンは初めてエビフライを食べてから、大好物になったらしい。


「ハハハ・・・マスターは優しいなー」


 シオンの方は大丈夫そうだな。


「ごめんなさい・・・母様・・・私のせいで・・・」

「貴方は立派に闘ったわ。敗因が有るとすれば、私の方よ」


 サーシャも目が覚めたらしい。

 サーシャは今、サーシャによく似た綺麗な緑髪を持つ美女に膝枕されている。


「サーシャ、起きられる?」

「ハイ・・・もう大丈夫です」


 サーシャが立ち上がると、エメラルドと名乗っていた女性が話し掛けてきた。


「私の本当の名はレーシャ、サーシャの母です」


 髪の色を除けば、大人びたサーシャという印象を受ける。雰囲気はおっとりしているが、心の強さを感じる。


「試合前の取り決めにより、サーシャは固金様のものとなり、私はこの世を去ります」

「お母様!私も一緒に死にます!マテリア様!今すぐ罰を変更して下さい」

「サーシャ、彼にならば仕えても良いと言ったではありませんか。固金様が気になっているのでしょう?」

「い、言いましたけど!それとこれとは別でしょう!私は、私は母様と離れたくないのです!」

『レーシャよ、考え直す気は無いのか?』

「マテリア様。私はもう、誰かのものになりたくないのです。娘を託せる殿方が見つかった以上、早く夫の側へと旅立ちたいのです」


 もしかしなくても、結果的にこの親子を引き裂こうとしているのは、俺なんだよな。


「固金様、此度のシャスティングの前から、娘は貴方様を好いています。産まれたときからマテリア様の庇護下にあったため、世の中の事を何も知らぬ子ですが、どうか導いてやって下さい」

「・・・・・・理不尽な扱いをしないことだけは、約束します」


 この人の決意は固いようだ。思えば、これまでの命懸けの敵よりも、勝つことに執着していなかった。

 今回のシャスティング、娘を託せる相手かどうか、見極めるのが第一目的だったのかもしれない。


「固金様は、全てのシャスティングに勝利した後、異世界で生きるのですか?」

「ここに居る全員で、移住するつもりです」


「ならば、()()()()()()()()()。本気で皆を大切だと想っているのなら」

「・・・それは、どういう意味ですか?」


 建国しろとでも言うのか?それとも、王位を簒奪しろとでも?


『王になれば力を得られる。向こうの世界では、シャスティングの強さが全てだ。それ以上の情報には制約をかけている。無理には聞くな』


 マテリアがワザワザ釘を刺してきたか。何かあるな、これは。


「俺は・・・負けません。誰にも」

「ガイウスという男に気をつけてください。サーシャを狙って来るかもしれません」

「ガイウス・・・」


 穏やかなレーシャが、一瞬殺気を纏う。俺が気圧される程の殺気を。


「サーシャ、元気でね。幸せになりなさいね」

「母様・・・私は・・・」

「マテリア様。私の駒をサーシャに、スキルを固金様に渡して下さい」


 マテリアがレーシャに手をかざすと、レーシャの胸から光が四つ飛び出し、俺のハンティングギアに吸い込まれる。

 次に、レーシャのハンティングギアが光となって、サーシャのハンティングギアに吸い込まれる。


「母様・・・本当に、もう行ってしまうのですか」


 サーシャの目から涙が溢れ、頬を濡らしていく。

 レーシャがサーシャを抱き寄せる。


「皆さん、サーシャは良い子です。どうか、サーシャを助けてやって下さい。・・・じゃあね、サーシャ」

「・・・・・・さようなら、母様。今まで守ってくれて・・・ありがとう・・・」


 レーシャは真っ直ぐ門へと歩いて行く。


「私の方こそ、貴方が居なければ、とっくに生きる事を諦めていた。・・・ありがとうサーシャ。私のお腹に宿ってくれて。産まれてきてくれて・・・ありがとう」


 その言葉を最後に、レーシャは門の向こう側に消えていった。


「マテリア、あの門の向こう側に行った人間は、本当に死んだのか?」


 もしかしたら、そう頭によぎってしまった。


『・・・それが、シャスティングのルールだ。例外は無い』

「なんのために、こんなゲームを作った!こんな悲劇を繰り返させるためか!」

『完璧なシステムには程遠いのは分かっている。だが、シャスティングが無ければ、より多くの命が失われていた。お前達の世界とて、悲劇が存在しないわけではなかろう・・・』


 マテリアは炎の身体を消して、この場を去った。


 今よりも、強くならないと。この言葉を、何度も自分に刻みつけよう。高みへ上り続けるために。


「固金様。竜人サーシャは、主人様(あるじさま)に生涯の忠誠を誓います」

 

 サーシャが俺の前で跪き、目を合わせて宣言した。

 その顔に、憂いを残してはいたが、彼女の覚悟を汚したくなかった。


「サーシャ、お前の忠義を信じる。俺に力を貸してくれ」

「ハ!お任せ下さい!我が命に替えましても、主人様をお守りいたします!」


 参ったな、そんな悲壮な決意をされても困る。

 俺はサーシャの顔の前に手を差し伸べ、彼女を立たせる。


「マリア。サーシャに言ってやってくれ」

「サーシャさん、私達と家族になりましょう。私は、サーシャさんなら大歓迎です」


 やはりマリアは、よく分からない角度から話し始めた。


「竜人が味方になるのは心強いですね」


 ルーザは試合を見ていないが、サーシャが俺に相応しいと判断したのだろうか。


「私は祭り。これから宜しく、サーシャ」

「私は楓と言います。分からない事があったら聞いて下さい」

「マリアです。家族になりましょう」


 マリアだけ結婚を前提にしたナンパみたいになってる!


「ブフ!マリア様、あまり変なことを言わないで下さい」


 サーシャが笑った。やっぱり、マリアは凄いな。


「変なことですか?サーシャさんは、固金さんのことが好きなんですよね?なら、私達と家族ですよ。ね、固金さん」

「へーと・・・」


 流れで分かってはいたけど、サーシャを俺の女にしろということか。やっぱり、マリアはオカシイ。


「い、良いのですか?私はさっきまで、皆さんを殺そうとしていたんですよ!なのに・・・」

「僕なんて元男だよ。そんな僕のオッパイもマスターは大好物なんだ。君ならなんの問題も無いさ!」


 まるで女の価値をオッパイで考えているみたいに言わないでくんない!しかも、俺が日常的にしゃぶりついてるかのような言い回しじゃねえか!咥えた事なんて一度も無いのに!お前が元男とか言うから、胸があれば誰でも良いと想われるじゃん!

 ・・・サーシャの胸は素敵だと思うけどね。鎧越しだけど、大きさも形も好みだと思うし。


「・・・今夜は私が、この胸で・・・ご奉仕しますね♡」


 肯定しちゃったよ!俺の変態的オッパイ愛を受け入れちゃったよ!いや、そもそもそこまで変態的オッパイ好きじゃねえし!


「・・・ダメでしょうか・・主人様・・・」


 さっきまで真っ赤に恥じらっていた顔が、泣きそうにな顔に歪んでいく。


「・・・俺で良いのか?結婚相手が六人も居るような相手だぞ?」


 サーシャのことは、嫌いじゃない。

 シャスティングの中で、彼女の根っこにある部分を垣間見た。

 彼女にとって大切なのは母だった。好いていたらしい俺よりも、母を生かすために全力で闘ったのだから。

 そんな彼女に対して、俺は好感を持っている。サーシャは、大切なものに対して優先順位を付けられる良い女だ。


 ドライだと感じる人も居るかもしれないが、そういう判断を下せる人間は、非常事態に力を発揮してくれるだろう。

 いざという時、俺を見捨ててでもマリア達を守ってくれるはずだ。

 後で、マリア達に気付かれないように命じておく必要がある。


「主人様以外なんて、考えられません。前回のシ、変態とのシャスティングを観たときから、心を奪われておりました。」


 ワザワザ変態って言い直したよ!あの試合の様子を見ていれば、気持ちは分かるが。


「それに、これ程の女性達を従えられる主人様は、もっと多くの女性を侍らせるべきかと!」

「なんで俺の周りの女達は、こんなにも俺に対して肯定的なの!・・・・・取り敢えず、サーシャの気持ちは分かった」


 サーシャを含めて七人。今更だが、これ以上増やすわけにはいかない。・・・はずなのだが、嫌な予感がする。


「サーシャ。今日からお前は、俺達の家族だ」

「一生付いていきます。主人様!」


 サーシャの満面の笑顔と共に、世界が白く染まる。



            ☆



 ここは、イベント会場の中庭か。

 マリア達の言う通り、庭の中心に銀の大時計があった。

 

「ご主人様、全員います」


 ルーザの報告を受ける。サーシャ以外はコスプレの格好に戻っていた。

 ここでならサーシャの鎧姿も目立たない。


「サーシャはマリア達と一緒に行動してくれ。俺と美鈴は予定通り動く」


 異世界への移住が決定した以上、無理にこれから起こる騒ぎを止める必要は無いが、せっかくスキルを大量に手に入れるチャンスなのだ。奪えるだけ奪う!


「美鈴、案内を頼む!」

「ハイ、先輩!」


 今日が”エスパーズ”最後の日だ!・・・・・・悪役みたいだな、俺。



少しの間、更新を休む予定です。

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