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シャスティング 犠牲になるのは私を愛してくれた人?  作者: 魔神スピリット
第一章

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第34話 進化フローズヴィニトル

 結果的に言えば、ラテルの自爆は無駄に終わったように見えるだろう。俺にとっては、それによって得た情報の方が有用だ。メダルを二枚消費させたしな。


 エメラルドには、気絶させるという戦術は取れない。なんのスキルか分からないが、気絶を防ぐスキルを持っているのは間違いない。


 現在、シオンによる”時間崩壊”二枚を使用した事で、メダル消費以外でのカード使用が出来ない状況だ。


 ”バリケード”を発動後、俺はエメラルドとサーシャを合流させないよう、中立地帯に駒を進める。


『行け、トワ』


 三体のドレイクに身を守らせ、融合駒であるトワ一体を突っ込ませるか。その方が操作に集中出来るもんな。


「ホロケウ!」


 ”霊樹の木刀”を持たせていないため、今のホロケウは姿を消せない。だが、”隠密”のスキルによって気配を消すことが出来る。

 ホロケウがドレイクの囲いを抜け、エメラルドに直接攻撃する。だが、ホロケウの村正による上段斬りは、エメラルドの盾によって受け止められてしまう。


『怖いな~。あんなに近付いていたなんて。それにしても、なんでワザワザ名前を呼んだんだい?』


 あっという間にドレイク達に両腕と左足を食い千切られてしまう。


「つうーーー!ドーディ!」

『サクリファイスパワーの布石かな?インヴィジブルを使わなかったって事は、本気じゃ無かったんだろ』


 俺がワザワザ負傷させてまでホロケウを退場させたのに、バレバレとは。さすがに多用しすぎたか。実際に使ったのは一度だけだが、使おうとした素振りは、他にもあったからな。


「まあ、違うけどな!メダルを使用!サクリファイスロスト!」

 

 青のカード”サクリファイスロスト”は、発動条件は”サクリファイスパワー”と同じだが、効果はこのゲームが終わるまで、プレーヤー以外の指定したスキル一つを使用禁止にするというものだ。


「俺が指定するのは、”再生”だ!」

『く!知っていたのか・・・』


 竜の駒の厄介な所は、全ての竜駒に”再生”のスキルが備わっていることだ。生半可な攻撃では再生されてしまう。だが、俺の”サクリファイスロスト”によって、フィールド上で”再生”スキルは効果を発揮しなくなる。つまり、全ての竜駒から、スキル一つを消してしまったということだ。

 サーシャが使う融合駒が、見た目は竜だが、竜駒じゃ無いのには驚いたが。


『二人の奴隷から情報を引き出したか。いや、率先して話したのかな?』

「駒の操作が疎かになっているぞ!」


 ガロンの甲大剣が、トライヘッドドラゴンを切り刻んでいく。だが、さすがに融合駒は硬く、傷を付けるので精一杯か。


『やはり、強い!だが、これは躱せるかな?ドラゴンブレス!!』


 トワの三つ首から、同時にドラゴンブレスが放たれる。

 逃げ道を塞ぐようにして、三つの光がガロンがいる中央へ収束していく。


「があああああ!」


 ”頑強”のスキルが無ければやられていた。だけど、おかげで狙っていたスキルが発動する。


 ガロンの体を真紅の気が覆う。


『まさか、”命の火”ですか』

「ああ、だけど、驚くのはこれからだ!メダルを使用!進化だガロン!」

 

 ガロンの姿が変わっていく。見た目だけではなく、スキルも変化していく。


陸〔ガロン〕 進化駒・通常


スキル⚫頑強 ⚫進化 ⚫命の火



 ”進化”のスキルを得たことで、通常駒とは違う表示になったが、”進化”すると更に変化する。


陸〔ガロン〕進化駒フローズヴィニトル


スキル⚫悪辣 ⚫瘴気 ⚫退化 ⚫完全耐性 ⚫転換



 姿は黒く染まり、紅の瞳、体からは常にスキルによる瘴気が発せられている。

 武器はガロンの時の甲大剣と片刃の短剣に加え、ランクが上がった時に手に入れたレジェンドウェポン、黒い柄に炎の刃のレーヴァテインを装備している。


『進化したことで傷は消えたのに、”命の火”の効果が消えない!』


 ”命の火”は、駒が六割以上傷付くと能力を1,3倍にするという効果がある。

 駒は進化する事で傷が癒えるため、進化後に効果が引き継がれると考える者はいなかったようだ。


 俺だって、思いついたは良いが、半信半疑の賭けに出てようやく確証を得られたんだ。シャスティングで勝ち抜くためには、そんな賭けに出る余裕なんて普通無いよな。

 もし進化後に効果が消えていたら、”命の火”のスキルをろくに生かせなくなる。進化駒なら、”命の火”が発動するほど傷付く前に、サッサと進化させた方がよほど戦力になるからな。

 

 俺のメダルは残り二枚、向こうは三枚残している。


 駒も、向こうは全て健在。圧倒的に不利な状況だ。


『圧倒的に優位なはずなのに、なぜこんなにも!』

「ガロン!」


 レーヴァテインのスキル”煉獄”によって生み出した炎を、”火炎操作”で操り火の波とする。


「プロミネンス」


 俺もサーシャのように必殺技に名前を付けることにした。

 俺とエメラルドの試合の横で、ワイバーンの融合駒が下方へ突撃するのが見えた。技名もバッチリ聞こえていた。回転しながら激突する瞬間、ワイバーンが”鋼鉄化”するのも見えていた。


 自分への負担を考えない危険な技だ


 ”鋼鉄化”を発動することで、硬さと重さによる威力の底上げ、更に回転を加える事で凶悪な破壊力を生み出しているが、その分、反動によるダメージもシャレにならないレベルのはずだ。


 ガロンが放った炎の波は、トライヘッドドラゴンに纏わり付き、覆い尽くす。


『ウアアアアア!・・・メダルを!・・・使用!平和な拘束(ピースバインド)!』


 効果の対象はガロン。またガロンが動けなくされたか。

 ガロンとのリンクが切れたため、炎も消えてしまう。


『今の・・・うちに・・・』


 命が懸かっているからか、凄まじい執念を感じる。全身が溶けた融合駒から、それ相応の痛みを感じているはずなのに。


『トワ!ドラゴンブレス!!』


 俺の陣地まで進入してきたトワが、マリア達に向かってドラゴンブレスを放とうとする。

 

「今だ!撃て!」

「ドラゴンブレス!!」


 トワから放たれたドラゴンブレスは一つだけ。真ん中の首以外、溶けて使い物にならないようだ。

 おかげで()()()()()()()ドラゴンブレスで相殺出来た。


『・・・なぜ、エルフがドラゴンブレスを・・・』


 竜の駒にしか使えないはずのスキルだもんな。ヤタがトワに攻撃を仕掛けているのに、反撃してこない。余程驚いたようだ。

 シオンとルーザから二人のこれまでのシャスティングについて聞いていたため、サーシャもドラゴンブレスを使えるのは知っていた。試合前に見たスキルの中から当たりを付けて、”模倣”のスキルで”竜技”のスキルをコピーさせた。


 ルーザの姿が揺れ、美鈴が姿を現す。炎のような黄金の狐耳と九本の尻尾を生やし、花魁(おいらん)のような着物を身に纏う眼鏡美人が。


 これまでのシャスティングで、ルーザが弓以外に取り柄が無いのはバレているであろうと考え、完全に能力が知られていない美鈴によるビギナーズラックを狙った。


 ”幻影”のスキルによってルーザだと思い込んでいただろうから、ずっと弓矢を警戒していたことだろう。

 

『・・・狐につままれたというわけね。そうでないと()()()()()()!』


 こちらが仕掛けた罠に気付いたようだが、何故か嬉しそうだ。

 ガロンを無視してドレイク達と共に俺の陣地に進入してくる。

 その時、大きな音と共にワイバーンの駒が破壊される。


『メダルを使用!スキルコピー!対象は”並列思考”!』

「させるか!メダルをし・・・・・・」


 声が出ない!”エフェクトブレイク”でカードの発動を妨害するつもりだったのに!


『私のスキルで声を出せなくしました。ほんの僅かな時間だけですが。メダルを使用!ピースリバース!』


 破壊されたワイバーンの駒が復活する。


「・・・あ、あ、ようやく喋れるな。・・・口調が変わったな。そっちの方が似合っていると思うぞ」

『あらお上手。でも、そんなセリフばかり言っていると、彼女達に刺されるかもよ』


 時間稼ぎのつもりで言ったのに、女性の声で返されるとは。


「女だったのか?」

「フフフ、どうかしらね。貴方を揺さぶるための演技かも」


 確かに、急にやりづらくなった。


『では、”並列思考”を得た私の闘いぶりを存分に見せてあげる』


 自分の守りにトワを付け、三体のドレイクをガロンに向ける。

 俺はヤタをマリア達の傍に戻して、ガロンの操作に集中する。


 三体のドレイクが、一斉にドラゴンブレスを放つ。ガロンに直撃する直前に、”平和な拘束”の効果が切れるのを見越した戦術だ!


「ドーディ!メダルを使用!サクリファイスパワー!」


 ”サクリファイスパワー”の使用条件を満たすためにヤタを退場させ、能力二倍の恩恵を受ける。


『青のカードで出来る最良の判断ですね。その後の対応も見事』


 ガロンの損傷は軽微。直撃する前に”プロミネンス”による防御行動を取った結果だ。


 ”ワープ”が使えれば、もう少し有利に進められたんだが。


『でも、あちらの守りは薄くなりましたね!』


 トワがマリア達に向かって、よろめきながらも突っ込んでいく。

 

「美鈴!ドラゴンブレスを!」

「ちょっと待って下さいね、すぐ終わりますから」


 美鈴は手の平の上に魔力を集中させて、拳銃を作り出す。 ”創造魔法”で作り出せる唯一の銃。手の平に収まるほど小さい、一発しか撃てない小型の拳銃だ。


 あれじゃあ、融合駒の硬い皮膚を貫けない。いったい何をするつもりなんだ!


「・・・ドラゴンブレス」


 美鈴の銃から、先程より細いドラゴンブレスが放たれ、トワに直撃。直径五センチほどの穴を開通させた。


「名付けて”ドラゴンブリッツ”ってのはどうですかね。シューティングゲームは得意なので、いけるかなと思ったんですよ」

「いや・・・今のは何だ?」

「銃で狙いを付ければ、威力を上げられる気がしたんですよ。蛇口を狭めると水が勢いよく出るみたいな?」


 さすが、”土魔法”を”創造魔法”なんてものに昇華させた女。とんでもないジョーカーに変貌しやがった。


『グフッ!・・・まだだ!』


 トワが撃たれた辺りを押さえているエメラルド。

 再びトワが前進を開始する。


「美鈴ちゃん、来ますよ!」

「任せて下さい、マリア先輩!もう、要領は掴みました」


 美鈴が、新たな銃を創造する。

 出来上がったのは、玩具にしか見えない小さな赤い銃だった。


「・・・ドラゴンショット」


 狙いを付けて放たれたドラゴンブレスは、一つの玉となってトワの体の中心にめり込み、破裂した。


「あああああああああああああ!!」


 内側から外に、幾つも銃弾が飛び出しているようだ。・・・あれは痛そうだ。

 美鈴の攻撃によって、トワは完全に消滅した。


『恐ろしい子だ。・・・これ程の人材が集まっているなんて』


 ガロンとドレイク達の戦闘は継続されている。

 ガロンの”瘴気”によって、攻防が行われるほどドレイク達が傷付いていく。


『”瘴気”を生かすための、”再生”封じでしたか』

「”再生”があると、ダメージを蓄積出来ないからな」

『異界人でありながら、これ程緻密なシャスティングを実行するとは、貴方は末恐ろしい』


 互いに”並列思考”を持っているため、会話をしながらも駒の操作に集中出来ている。


 青いドレイク、フロストが”凍結”を発動すれば、黄色のドレイク、ナターシャが”放電”を使用してくる。赤いドレイク、フレアが”火炎”を使用してこないのは、ガロンが持つレーヴァテインに”熱耐性”に”火炎操作”があると分かっているからだろう。

 レーヴァテインの”不壊”の効果は、”転換”のスキルでも駒には反映されないからな。逆に、効果が反映された敵を相手にするのは嫌だけど。


 シオンの陣地から逃げてきた祭りと楓は、背後を警戒しながら、ガロンとドレイク達の闘いを見ている。丁度、俺の陣地への入り口を塞いでしまっているからな。


 シオンの方は、サーシャとワイバーンをワルツ一体で必死に抑えている。

 エメラルドが”並列思考”を得た後、シオンもエメラルドから”並列思考”をコピーしていた。まだ、暫くは保つはずだ。


 意識をガロン一体に極限まで集約する。そうしなければ、ガロンでワルツを破壊したときのような操作は出来ない。

 あの時の感覚、それは・・・・・・()()()()()()()


『何!?』

 

 フロストの懐に飛び込み、逆手に持った短剣を鎖骨辺りに差し込み、手首を捻りながら、喉を上方へと切り裂く。


『くhfっdっふjgfd』


 エメラルドには”痛覚耐性”とは別の、痛みに耐えるスキルがあるな。出なければ、痛みで動きが鈍らないのはおかしい。


 ナターシャの雷撃をわざと受けながら、懐に飛び込みレーヴァテインを一閃。

 ナターシャが消える。


『・・・・・・先程までとは、別人ではないですか』


 さっきまでは、駒の性能差を数で埋められていたからな。


 フレアの顎と爪を甲大剣で弾くと同時に、傷を刻んでいく。

 レーヴァテインが効かないフレアに対しては、それ以外の武器で対応するしかない。

 重心移動を見極めて体制を崩した瞬間、甲大剣で首をぶった切ってやった。


 虫の息だったフロストにもトドメを刺す。


『大した人だ』

「サーシャのように抵抗しないのか?」

『あの子と違って、私には直接闘う力は無いから』

「・・・そうか」


 エメラルドの現し身にレーヴァテインを振り下ろし、消滅させた。


 後は、サーシャだけだ。


「よくも・・・よくも母様を!!」


 サーシャの声がフィールドに響き渡った。

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