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シャスティング 犠牲になるのは私を愛してくれた人?  作者: 魔神スピリット
第一章

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第32話 衝撃の事実

 美鈴から”エスパーズ”についての話を聞いた後、俺は一人でゲームフィールドに戻ってきた。


「マテリア!居るんだろ!出て来てくれ!」

『・・・何用だ、固金よ』


 黒い炎が現れ、あっという間に骸骨をかたどる。


「俺達の世界でスキル持ちが騒動を起こそうとしている。それを止めるための手段が欲しい」

『何故、我がそのようなものを与えなければならない』


 案外、協力してくれるのではと思ったが、駄目か。


『・・・通常の報償を、融合石のみにしても良いのであれば考えないこともない』

「それで構わない。頼む」


 向こうから妥協案を出してくれるとは、助かった。


『フ、迷わぬか。で、異世界で生きるかどうかは決めたのか?』


 何だ、急に。


「・・・異世界に行く気はない。俺は皆で幸せに暮らせればそれで良いんだ。海外に移住して皆と結婚する。その先のことは考えてないけど・・・」

『いや、無理だろ。お前日本人なんだから』


 また急に口調が変わったよ。


           ★


 その後、俺はマテリアから衝撃の事実を教えられた。


 自分の考えの甘さを思い知らされた。細かいことは一年後に考えれば良いと思っていたので、自分で調べるのを怠っていたらこの結果か。


「ハアー~~~~」


 重いため息を吐きながら待機室のドアを開ける。


 ・・・目の前に犬耳、いや、狐耳か?を生やした美鈴が居る。よく見ると尻尾が九本生えている。しかも半透明だ。黄金色の耳と尻尾が炎のように僅かに揺らめいている。


「先輩、イメージしてみたらこんな事になっちゃいました」


 若干泣きそうな顔で訴えてくる美鈴。俺も泣きたいなー。


「スキルを自覚する事で扱えるようになるという話は有りましたが、妖狐という自覚が芽生えたことで今の姿に変わったのだと思います」


 ルーザが落ち着いた口調で解説してくる。


「元には戻れるのか?」

「や、やってみます」


 耳と尻尾が光に変わり、美鈴の中に入っていく。

 数秒後には、元の美鈴の姿があった。


「美鈴ちゃん、ちゃんと元に戻っているよ」

「ハアー、良かった。一時はどうなるかと思いました」


 マリアが美鈴を慰めていた。今の俺には余裕が無いので助かる。

 あの話は・・・今言おう。一人で抱え込んでもろくな事にならないのは学習した。というか、正直辛すぎて言ってしまいたい。






「先輩、よく調べもせずにそんな計画を立てていたんですか?」


 美鈴の目が、俺を蔑んでいるように見える。この後輩にこんな目を向けられる日が来るなんて・・・ヤバイ!吐きそう。


「そうですか、移住して結婚は無理そうですか」


 皆にマテリアから聞いた、海外に移住して重婚するという目論見が上手くいかない理由を説明した。一応、内縁の妻という形なら抜け道を見付けられそうな気はしたのだが、その場合、皆で幸せに暮らす事が可能かどうか怪しくなってきた。


「私は、元々愛人になれれば良いと思っていたから構わないけど・・・」


 そう言う楓の顔は、どこか残念そうで・・・。


「僕も気にしないよ。最初から叶わぬ恋と諦めてすらいたからね。一緒に暮らせるだけでも十分さ」

「・・・そうですね、そもそも私とシオンは奴隷ですから、過ぎた夢を見た罰なのかもしれませんね」


 シオンもルーザも、必死に何かを堪えている。


「愛妾って形でも・・・まあ良いか!問題のある関係かもしれないけどさ、離れ、離れ・・・ばなれに・・・なる・・・わげじゃ・・・ないじ・・」

 

 祭りが涙を堪えきれなくなる。

 俺が皆に、夢を見せてしまったからこそ生まれた状況だ。俺は、全部受け止めなきゃいけない。


「私は嫌です!皆が固金さんと結婚できない未来なんて嫌です!全員で幸せになるんです!だから、だから・・・」


 マリアの言葉がトドメとなり、美鈴以外の全員が泣き出した。みんな、それだけ俺と結婚したかったのか。俺なんかと・・・視界がぼやけてきた、この感覚はグレー戦以来か。


「・・・みんなが俺と結婚する方法はある」


 みんなの視線が俺に集まる。縋るような目に愛おしさすら感じてしまう。


「ルーザ達が生まれた異世界なら、男は七人までの女性と結ばれる事が許されているらしい」

「た、確かに、向こうでならそれ以上の人数と結婚する方法もある!」


 あれ、シオンから意図していない単語が出て来たぞ。おっかしいな~。


「じゃあ、今よりももっと、も~っと家族が増やせるんですね!」

「へ!ああ、うん・・・」


 マリア、お前の家族増加願望は一体何なの!?さっきまで泣いていたから問いただせないんですけど!ていうか、聞くのが怖い!


「わ、私も良いんですよね、七人の中に入っていますよね?・・・オッシャー、先輩ゲットだぜ!」


 美鈴がぶっ壊れた!?


「えーーーと、みんなで異世界に行くということで・・・良いのか?」

「「「「「「異義なーーーし!」」」」」」


 これから、色々大変そうだ。






 あのイベント会場にも銀の大時計が有ったらしい。

 マリア達が会場の中庭に足を踏み入れると異界に転移したそうだ。


「あの時は驚いたよねー。転移した直後に固金が知らない女の子を押し倒してキスしてるんだから」

「頼む、それ以上言わないで・・・」


 祭りが楽しそうにからかってくる。うん、俺が悪いよね。


「ルーザ、シオン、融合駒について教えてくれ」


 強引にでも話を変えねば。


「融合駒は、融合石を使って二体以上の駒を融合したものだよ」

「融合駒の基本性能は進化駒と同等と言われ、スキルが通常駒の二倍の八つ取得可能になります」

「進化駒と融合駒を比べてのメリット、デメリットは」

「進化駒は、”進化”のスキルを持った駒にメダルを一枚使用して初めてフィールドで使用可能になるのに対し、融合駒は、駒二つ分の枠を使って初めから融合した状態でゲームを始められる。ちなみに、一度融合駒にすると二度と元には戻せない」


 メダルを取るか、駒二つ分を取るかの違いか。


「進化駒は、進化した時にスキルが決まった五つになり、自分達で変更する事が出来ません。対して融合駒は、自分達でスキルを与えなければなりません。融合した時に、スキルが発現する場合もありますが」


 スキルクリスタルを大量に持って入れば、融合駒の方が戦略的自由度が高いのか。

 進化駒には、”退化”と”転換”のスキルが備わっているという共通点が有るらしいから、進化駒の方が能力を見極められやすいだろう。


「エメラルド達が進化駒を使って来る可能性はあるか?」

「エメラルドは古参のプレーヤーだけど、シルバークラスでは無かった。あのサーシャという子もブロンズクラスだったはずだ。僕が固金の奴隷になってからランクが上がった可能性はあるけどね」


 可能性としては低いか。


「ご主人様のシルバークラス入りは異例中の異例です。格上のシルバークラスであるシオンに、五十一対十一という、ハンデがある状態で勝利したからこそでしょう。でなければ、たった五戦しかシャスティングをしていないご主人様のランクが上がるなんてあり得ません」

 

 思っていた以上に、俺は凄いシャスティングをしていたようだ。


「それよりも、あの二人が竜人という方が厄介だ。これまでのシャスティングでも、二人は竜の駒を多く使用していた」

「竜の駒?」

「竜の駒は、竜人にしか使えない駒なんです。基本的な能力が高く、ドラゴンブレスを使って来るのが厄介です」


 ドラゴンブレス?色々面倒そうだな。


「エルフにもあるのか?エルフにしか使えない駒って」

「・・・有るには有ります。私には使えませんけど」


 ルーザが落ち込んでいるように見える。聞いちゃいけない話だったらしい。


「すまん、聞いて悪かった」

「・・・いいえ、私の方こそ申し訳ありません」

「鳥人族には、ガーディアンという専用の駒が有るらしい。映像でしか見たこと無いけどね」


 話を逸らそうとしたのかシオンが別の話題を提供してくる。何気に優しいよな、こいつ。


「美鈴の”創造魔法”は何でも作れるのか?」

「あまり複雑な物、重い物、食べ物なんかは無理ですね。複雑な仕掛けがある物は構造を正確に把握しないといけないですし、重い物は単純に疲れるので」

「食べ物に関しては?」

「私が作った物って、ある程度壊れると光になってしまうんです。食べ物は、作れるには作れるんですけど、体の栄養に変わる前に光になっちゃうので・・・」

「食べる意味が無いか」

「ハイ、あんな感じになっちゃうんです」


 美鈴の視線の先には、口から光を吐き出すマリアがいた。・・・何をしているんだよ、お前は。


「味はするけれど、噛んでいるうちに光に変わっちゃいますね。いつも待機室にある料理、帰った後に食べられないかと思ったんですけど」


 マリアさんの食い意地は半端無いようです。



          ★



 全ての準備が終わり、バトルフィールドへと戻ってきた。


「眼鏡の子が居ないようですが、どうかされたのですか?」

『おいおいサーシャ、そんなこと聞いてあげるなよ。きっと激しすぎて腰を抜かしてしまったんだよ』


 あの丸っ著ウゼーーー。


「?訓練のし過ぎで動けなくなったということですか?本末転倒ですね」

『ああ、まあ、そうだね』


 あの二人の関係が益々分からなくなる。


 今回のバトルフィールドは、巨大な正方形の四隅に小さな正方形がそれぞれくっついたものだ。

 手前の二つの正方形が自分陣地で、反対側の二つが敵陣地、一番広い真ん中は中立地帯だ。


 俺の青のカードは、陣地が発動条件に関わるものが多い。つまり、俺のカードを封じるために中立地帯を設定した可能性が高い。

 だからこそ、向こうが青のカードを使って来ないと予想できるんだがな。

 

 シオンは右に、俺は左の陣地の端に立つ。

 エメラルドは俺の向かいに、サーシャはシオンの向かいに移動した。


『「セッティング」』


 サーシャが配置した駒を”真理眼”で確認する。


陸〔キャシー〕 コモドオオトカゲ 変質駒


スキル⚫猛毒



陸〔エカテリーナ〕 ブラックマンバ 変質駒


スキル⚫猛毒



〔竜の駒〕 通常駒


スキル⚫竜技 ⚫再生



空・陸〔エア〕 ワイバーン 融合駒


スキル⚫飛翔 ⚫再生 ⚫猛毒 ⚫鋼鉄化



 次にエメラルドの駒を見る。


竜〔ナターシャ〕 サンダードレイク 変質駒


スキル⚫竜技 ⚫再生 ⚫放電 ⚫雷耐性



竜〔フレア〕 ファイアドレイク 変質駒


スキル⚫竜技 ⚫再生 ⚫火炎 ⚫熱操作



竜〔フロスト〕 フロストドレイク 変質駒


スキル⚫竜技 ⚫再生 ⚫氷結 ⚫氷耐性



竜〔トワ〕 トライヘッドドラゴン 融合駒


スキル⚫竜技 ⚫再生 ⚫三つ首 ⚫咆哮 ⚫頑強



 どちらも融合駒を出してきたか。

 ・・・何故女っぽい名前ばかり付けているんだ?

 それにしても、竜の駒は全て再生持ちか。属性は陸でも、空でも、海でもないんだな。

 ・・・カッコいいなー。手に入っても、俺には使えないんだよなー。


「セッティング」


 シオンが駒を配置する。

 

空〔ワルツ〕 進化駒・通常


スキル⚫飛翔 ⚫握力 ⚫進化



陸〔ザンコー〕 穿山甲 変質駒


スキル⚫頑強 ⚫堅牢



海〔デス〕 ワニガメ 変質駒


スキル⚫獰猛 ⚫堅牢 ⚫自爆 ⚫吸引



〔孔雀の駒〕 通常駒


スキル⚫毒耐性



〔立花楓〕 サキュバス・異界人


スキル⚫言語理解 ⚫妖艶 ⚫器用 ⚫魔力操作 ⚫忍術



 サーシャが、”猛毒”スキルを戦術に組み込んでいることを知っていたシオンの判断で、孔雀の駒を貸し与えることにした。

 シオンは鳥人のためか、空の駒の方が操作しやすいらしい。

 

「セッティング」


 俺の今回の駒は、ガロンとヤタにホロケウ、(いたち)の駒に変容液を使用して生まれたラーテルの駒ラテル、そしてルーザだ。


「『カード展開』」


 エメラルドが展開したのが緑のカード、サーシャは赤のカードだ。


「「カード展開」」


 俺は青のカードを、シオンは緑のカードを展開する。


「『スタンバイ』」


 敵である二人は、現し身をプレシャス駒として配置する。


「「スタンバイ」」


 俺のプレシャス駒はいつも通りマリアだが、シオンのプレシャス駒は祭りだ。


 楓と祭りの二人をシオンに預けたのは、シオンの負担を減らすためだ。”並列思考”を持っていないシオンの精神への負担は、俺が思っているよりも大きいらしく、みんなで相談して人駒を分けることにした。


「『「「ディード」」』」


 駒と意識がリンクしていく。”真理眼”を手にしたからか、今までと感覚が違う気がする。


 馴染みとなりつつある黒炎が、落下するのが見えた。


 ドオンンン!


 中立地帯の中心に炎が落ちると同時に、サーシャとエメラルドが、プレシャス専用陣地を飛び出し、中立地帯へと駆けだした。


「来るぞ!シオン!」

「じゃあ、手はず通りに動きますか!」

 

 二対二のシャスティングが始まった。

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