第2話 待機室で
固金君に促され、グレーは説明を始める。
『まず、ゲームを始める為に各種設定を行って頂きます。え~お二人のお名前は、何でしたかな?』
グレーは敬うような口調ですが、本心は、私達に全く興味が無いようです。
憎たらしい。
「固金だ」
「・・マリアです」
固金君・・普通に名乗るんですね。
個人情報流出とか考えないんですかね。
・・・・こんな場所に攫って来るくらいだから関係無いかもしれないけど。
『私とした事が申し訳ありません。では、固金様の左手をご覧下さい』
いつの間にか固金君の左手には、青いグローブ?が装着?されていました。
グローブは、指先が露出し、手の甲の中心部分には、何重にも円を描くように金と銀の装飾が施されています。
あれ、カッコイイな~
『そちらは、ハンティングギアと申します。シャスティングを行う際必要になりますので、今後絶対に無くさないで下さい』
そう言うと、グレーの右手が輝き、同じ物が出現した。
固金君のが青を基調にしているのに対し、グレーは灰色。
『各種設定は、ハンティングギアから行う事ができます。最低でも駒三体とカード二十枚は設定して置いてください。ルールの詳細は、ギアを使用すれば確認できますので、ご自分でお確かめください』
ご自分でって、今ので説明は終わりなの!?
『作業は、門の横にある階段を下ると待機室がありますので、そちらでお願い致します。およそ三時間後にお呼び致しますので、それまでに準備を済ませ、この場所に戻って来てください』
ではどうぞと言い、階段へと勧めるグレー。
もう、質問すら受け付けてくれないみたいです。
さっと、身を翻して階段へと向かう固金君の後を、私は慌てて追いかけました。
やっぱり、冷静過ぎません?
★
階段を下りた先の扉の向こうには、レンガ造りの長方形の部屋が広がっていました。
壁にくっついたソファーと、料理などの食べ物が沢山載った四角いテーブル。
他には、ドアが二つ付いているだけで、窓がありません。
ドアの先にあったのは、一つは、トイレとシャワー。
もう一つは、冷蔵庫付きのベッドルームでした。
ひと通り見終わって最初の部屋に戻ると、固金君がハンティングギアを操作していました。
一心不乱に作業をしている姿は、ロボットのようにも、鬼のようにも見え、一瞬、恐怖が背中を駆け抜けていきました。
・・・・固金くん?どうしたの?
やっぱり、こんな事になってしまった事に怒ってる?
巻き込んでしまった私の事、どう思ってるのかな?・・・・・・
この部屋に来てから三十分程たったでしょうか?
彼はずっと、空中に浮かんだ半透明な板?を操作しています。
する事が無い私は、テーブルの上に置かれた食べ物を、恐る恐る口に運んでいました。
食べ物は、とても美味しいです。
丸ごとカラリと揚げられた魚。
醤油ベースのフルーティーなタレが付いたお肉。
見たことがない緑の果実。
ドロリとした紫の甘い紅茶?
他にも、色々あります。
出来れば全部持って帰りたい。
「マリアさん」
「あ、ごめんなさい。邪魔しちゃいましたか?」
「いえ、ゲームの事で相談して置きたい事があるんですけが」
「は、はい。なんでしょうか」
さっきのこと、急に思い出して、顔が熱くなる。
心臓もドキドキしてる。
「その前に、僕の話しを聞いて欲しい」
これって、ひょっとして愛の告白!?
で、でも心の準備が!
私の返事次第では、隣のベッドルームに連れ込まれたりして♡!!
だ、駄目だよ。
私達、まだ学生だし。
「僕の過去について」
結局、愛の告白ではなかった。
言うなれば、固金君の人生の告白だった。
彼の原点を知った事で、色々納得がいった。
それに、・・・気付いてしまいました。
私がずっと前から、彼に惹かれていたんだって。
嫉妬という言い訳をしながれ、彼を見続けていた事に。
《『マリア様と固金様は、至急ゲームフィールドへ来てください。十五分後にシャスティングを開始致します』》
もう、そんな時間なんだ。
この気持ちに、もっと浸っていたかったな。
重圧とか、罪悪感とか、いつの間にか消えていて、幸福感で満たされている。
でも、切り替えなきゃ。
元の世界に、二人で帰る為に。
「行こう、マリアさん」
「はい♡固金さん」
私はもう、彼に墜とされてしまいました♡
マリアは、白いブレザーに黒いネクタイ、青いスカートの制服を着ています。
固金は、紺のブレザーに黒いネクタイ、白いズボンの制服を着ています。