第21話 驚愕の光景
『嫌だーーーーー!!助けてー~~~~~!』
うるさい女が巨大な骸骨の左手に捕まれている。
奮闘虚しく、あっという間に扉の向こう側へ引きずり込まれた。
俺の手の中には、先程報酬として手に入れたスキルクリスタルが六つある。
どうやらクリムゾンは、”言語理解”以外に三つもスキルを持っていたようだ。
その内の一つ、俺が決着を見誤った原因に目を向ける。
⚫生存本能:消滅するほどのダメージを受けると十秒間存在を維持する
ヒクイによる攻撃で消滅するはずだったが、”生存本能”によって存在を維持している間に”リバース”で回復か。
マリア達が動いてくれなければ、負けていたのは俺達だったかもしれない。
何が、油断など欠片もする気がないだ!完全に相手のスキルを警戒していなかった。
当初の予定通り、メダルを全て使わせてから勝負をかければ確実に勝てていた。
いや、シャスティングは一瞬にして逆転が可能なゲームだ。確実なんてあり得ないというのに、いつの間にか慢心していたんだ。
マリア、ルーザ、祭りが俺に命を預けたにも関わらず。
強くならないと!
俺をどれ程犠牲にしても構わない!それで勝利を引き寄せられるのなら!
今までの俺は、覚悟が足りなかったんだ!
気付けば手の中の石を、震えるほど強く握りしめていた。
「固金さん。ちゃんと、側に居てくださいね」
背中に抱き付いて、マリアが囁いた。
たったそれだけで、俺の中の焦燥感が霧散していく。
そうだ、焦ったってろくな事にならない。
マリアが、何故あんなことを言ったのか分からないが、その一言に救われた。
やっぱりマリアは、幸運の女神だ。
世界が白く染まる。
☆
自分達の世界に戻ってくると、場所は空き教室だった。
今回は向こうに行く前と同じか。・・・はしたない格好のルーザが居るが。
側にはマリアと祭りもいる。
ちゃんといる。・・・・・いてくれる。
やっぱり、祭りとも離れたくない。
俺は今の関係を守るために、・・・・・命を賭ける!
「・・・取り敢えず、ルーザをなんとかしないと」
はだしのルーザに靴を用意して、マリアに早退してもらい、ルーザと一緒に帰って貰った。
☆
シャスティング第三戦を終えたその日の夜、俺は湯船の中でルーザと祭りを抱き寄せていた。
「ど、どうしたの固金?」
「ご主人様が大胆に!」
「フフフ、みんな仲良しですね~♡」
二人とも頬が赤い。きっと湯船のせいではないだろう。
俺の背中に密着しているマリアの顔は見えないが、幸せな顔をしているのは間違いない。
ちなみに、全員タオルを巻いている状態だ。
「ルーザ、祭り、二人とも・・俺のことが・・・好きか?」
覚悟を決めるために聞かなければならない。
「今日、あんな話しをしたのに聞いちゃうんですか?」
「そうだな」
確かに、ルーザには聞くまでもないことだ。
「祭り」
「な、なに!?」
「俺にとって、マリアが一番だ。だから、祭りを一番には出来ない」
「・・・・・う、うん・・・」
湯船の中に居るにも関わらず、祭りの顔が青白くなっていく。
まったく、二人の彼女と同棲している俺なんかのどこが良いんだか。
「わ・・・私は・・・」
「それでも俺と、一生を添い遂げる気はあるか?」
「へ・・・・・」
みるみる顔色が良くなっていく祭り。少しホッとした。
「この国では一夫多妻は認められてないけど、外国なら認めている所もあるみたいだからさ。上手くいくかは分からないけれど・・・一緒に来るか?」
俺は、本当に最低だ。
マリアという人がいながら、他の女を二人も手に入れようとしている。
祭りは黙ったまま、中々応えてはくれない。・・・さすがに、勝手がすぎるか。
「・・・い、行く・・・・・一緒に行く!どこまでもついて行くから!・・・だから・・・・・連れてって♡・・」
祭りが、今までで一番可愛く見える!
「あっ!う・・ん♡」
気付けば、祭りの唇を奪っていた。
唇を離すと、祭りが物欲しげな瞳を向ける。
「ズルい」
ルーザの声が聞こえたと思ったら、今度は唇を奪われた。
「は♡・・・ん!ん♡・・ふ・・ん♡」
いきなり舌を絡めてきて、貪られる。
マリアとも、こんなキス・・したことないのに・・・。
数秒後、ようやくキスから解放された。
「今度は私ですよ、固金さん♡」
マリアが負けじと熱烈なキスを仕掛けてくる。俺もそれに応える。
「あ!・・ん♡・・・はあ♡・・気持ちいい♡・・・」
俺も気持ちよくて、頭が痺れてきた。
「二人ともエロいよ・・・・・私にも・・もう一回・・・」
祭りのおねだりに応えると、再びルーザとマリアが迫って来る。
その後、三人と何度もキスをした。
☆
夢のような一時の翌日。
俺達は朝から、昨日手に入れたスキルクリスタルの詳細を見ていた。
⚫障壁:一日三回まで光の障壁を生み出せる
⚫暴走:駒を暴走させる
⚫強奪:相手から自分が持っていないスキルをランダムに奪う
⚫魔力操作:魔力を操れるようになる
⚫火魔法:火の魔法を操れる
⚫生存本能:消滅するほどのダメージを受けると十秒間存在を維持する
「”暴走”と”強奪”の使いどころが分からないな」
「すみません、私にも分かりません」
「気にしなくていい、ルーザには、いつも助けられている。ありがとな」
「そ、そうですか?あ、ありがとうございます!」
随分照れてるな。思っていることを口にしただけなのに。
「ご、ご主人様がますます素敵になってるよ~~♡」
ルーザは朝から元気だな。
「”障壁”はどうする?」
「”障壁”は利便性が高いですからね、次のシャスティングまで保留でも良いかと」
「なら、後回しにしよう」
残り三つは、クリムゾンが所持していたスキルか。
「”生存本能”は、万が一の保険としてマリアさんに渡すか、相討ち狙いで”頑強”を持つガロンに与えるという選択もあるかと」
確かに良い戦術になるな。
利便性が高いスキルは、割り振りに悩んでしまう。
”生存本能”も保留にしておくか。
「”魔力操作”は、魔法スキルを使えるようにするのに必要なんだよな」
「はい、”火魔法”のスキルを修得しても”魔力操作”が無ければ魔法が発動しません」
魔法を使えるようにするためには、実質スキル枠を一つ潰さないといけないのか。
「通常の駒には取得させられないので、使うのは、私達三人の誰かですね」
通常の駒には魔力が無いらしい。
三人の中からだと、選択肢は一つしかないな。
「ハイ、ハイ、ルーザは後衛でマリアは基本的に前には出せないから、私が一番有効活用出来ると思うな~」
自身を必死にアピールする祭り。
まあ、俺も同じ事を考えていたけど。
「まあ、仕方ないですね」
「祭りさんにピッタリですね!」
ルーザとマリアが賛成を示したため、祭りに二つのスキルクリスタルを渡す。
「ああ、固金の物が私の中に入って来る~」
「お前、それがやりたかっただけだろ!半分棒読みじゃねーか!」
スキルクリスタルを取り込み始めた瞬間、以前マリアが口にしていたセリフをのたまう祭り。
マリアが両手で顔を覆っている。他人がやっているのを見て恥ずかしくなったか。
あの時は、若干ドヤ顔だったのに。
「ファイヤー」
スキルを取り込むと同時に魔法を使用する祭り。ここマンション内だぞ。
ボッ!
クリムゾンが使っていたものには程遠いな、小さな炎が現れたが一瞬で消えた。
「魔法にも相性があり、使い手によって魔法の効果が変わります。切っ掛けさえ有れば、自分なりの魔法を使えるようになりますよ」
「う、うん」
落ち込んでしまった祭りを、ルーザがすかさずフォローしていた。
「フフフフフ」
「どうしたマリア?」
「今日は初めて、みんなでお出かけが出来るな~って」
マリアは、本当に幸せそうな笑顔でそう答えた。
☆
俺たちは現在四人で、ある博物館に居る。
今は、”世界の武器展”が開かれており、あることを試すために来たのだが、俺たちはかなり目立っている。いや、目立っているのは俺以外の三人か。
二つの理由で全員がコスプレをしているのだ。
一つ目の理由は、ルーザの正体がバレないようにする事。
本物のエルフだとバレればどんな騒ぎになるか、想像したくも無い。
ちなみに、三人のコスプレはあるアニメのものだ。
三人の女の子が活躍するストーリーで、一人がエルフだったのと衣装がまとめて安売りされていたので採用した。
若干露出高めな服を、顔もスタイルも良い女の子三人が着ているのだ。老若男女問わず視線を集めていた。
俺のコスプレは、三人のヒロインの意中の相手という設定だが、一つだけアニメの衣装には無い物を身に付けている。
ハンティングギアだ。
この場所に来た目的のためには、どうしてもハンティングギアが必要だった。
ハンティングギアを目立たなくさせるのが、コスプレをした二つ目の理由だ。
ハンティングギアを身に付けた左腕を、展示品にかざす。
すると、ハンティングギアが展示品のデータを読み込んでいく。
第一戦で駒を作成したさい、数多くの武器から選ぶことが出来たが、剣だけではバランスが悪いし、二戦目でヒクイを作成して以降駒を作成出来なくなったため、今ある武器しか使えない。
そんな状況を改善するために、一週間前からこの武器展に目を付けていた。
ルーザからの情報で、ハンティングギアで現物から情報を読み取ると、シャスティングのさいに使用できるらしい。
同じ物から情報を読み取っても一つしか手に入らないらしいが。
☆
今日は午後からバイトが入っていたので、三人とは途中で別れた。
祭りは、今日一日休みらしい。その分明日は、朝から夕方までシフトが入っている。
今日一日でかなりの武器が手に入ったな。
明日一日で全て把握しておかないと。
俺が着替えを終えて店に出ると、驚愕の光景が目に飛び込んできた。
一緒に働いている女性が、若い男に身体を弄られていたのだ。




