第11話 ルーザ
ファルとガロンを、相手から見えないように柱の裏に隠す。
位置は当然バレているだろうが。
「メダルを使用。交換」
まず、離れた位置にいるヤタをパープルの死角に移動させ交換する。
ヤタが光となり、別の駒の形を形成する。
現れたのは、食火鶏がモデルの空の駒。
ダチョウと同じく飛べないが、地上を駆け抜け凶悪な蹴りを食らわせる。
世界一危険な鳥と言われ、泳ぎも上手いらしい。
相手が青のカードを使ってくるとすれば、”ビーストダウン”を使用するのは判っていた。
そこで、飛べない代わりに走力に優れた鳥の中から選んだのが食火鶏だった。
色は、基本カラーの青のまま”ヒクイ”と名付けた。
名前はシンプルな方が良い。
駒のイメージに合う事が大事だ。
決して適当に付けている訳ではない。
ないったらない。
「メダルを使用。交換」
ここは、惜しまず消費しよう。
ファルをヤタと交代する。
上手く罠にはまれば良いが。
『ビーストダウン』
掛かった!!
即座に隠していたヒクイを走らせる。
「ディード」
ガロンとのリンクを切り、退場させる。
後は、ヒクイの奇襲で蛸の駒を倒せれば良い。
ただ、あの蛸は手強そうだ。
人間の首の上に蛸が乗っかったような駒。
両手と八本の蛸足にそれぞれ湾刀(計十本)を装備している。
他の駒と大きく操作感覚が違うあの駒を選んだということは、扱いを熟知しているということだろう。
手数が十もあり、耐久力も高めだ。
守りに最適な駒と言える。
ガロンのリンクを切った直後、ドスッ!と豹の駒の胸をヤタの槍が貫く。
ガロンに仕掛けた虎の駒の攻撃は空を切っただけ。
さあ、注意を向けさせた上、カードの使用条件を満たしますか。
「ようやく痛みが無くなった」
よし、完全にこちらに注意が向いている。
パープルが動揺している間にヒクイが敵陣に侵入。
これで条件が揃った。
「サクリファイスパワー」
青のカードには珍しい強化系のカードを使用する。
”サクリファイスパワー”は使用条件に、自陣にいる自身の駒をリンクアウトさせていなければ使用出来ないというものがある。
その為に、痛みから解放されようとガロンとのリンクを切ったと思わせる芝居をした。
まあ、すぐに気付くだろうが。
必要だったのは、使用条件を満たそうとしたと悟らせない事と、ヒクイに気付くのを遅らせるために混乱させることだ。
”サクリファイスパワー”は、敵陣に居る自分の駒一体の能力を二十秒間二倍にするというものだ。
パープルが効果を知っていれば、自陣に侵入者が居ると気付いただろう。
”サクリファイスパワー”で能力が二倍になったヒクイを一直線に蛸の駒へと向かわせる。
ヒクイは飛び掛かりながら蹴りを放つ。
『何故!?』
予想以上に動揺しているな。
ヒクイの攻撃が湾刀二本で防がれると同時に、ジャマダハルを振るう。
『ガッ!』
蛸の額を浅く斬る。
ヒクイに装備させたジャマダハルは二十五センチの刃を持つ、拳から剣が生えたように見える武器だ。
蹴り技の邪魔にならない武器として採用した。
武器のリーチや手数でも負けているため、強化された能力に任せて果敢に責め立てる。
『アアアアアッアアアアアアアッアアア!!!』
蛸の駒の操作に意識を集中しているからか、他の駒の操作が疎かになっていたため、俺の陣地に居た敵駒をサクッと片付けた。
俺は優しいので、半壊ではなく全壊させておいた。
痛め付けて苦しめようなんて趣味は、俺には無い。
痛みで蛸の駒が止まったので、ヒクイで胸を蹴り抜いた。
『ー☆★ーZ●☆ー=z●Z★☆=ー★●Z!!』
声にならないほど痛いらしい。
・・・・・すまん。
プレシャス駒をのぞく全ての駒を破壊したことで、向こうの勝ち目は無くなった。
その為か、抵抗する素振りが無い。
万が一があるので、油断せずプレシャス駒の首をジャマダハルで撥ねる。
蓋を開けて見れば呆気なかった。
僅か一分ほどの攻防だった。
こうして、シャスティング第二試合は終わった。
『流石ですね。こうまで圧勝されるとは・・・』
シャスティングが終わり、パープルが近付いてきた。
・・・かなり落ち込んでいるように見えるが、気のせいか?
『ご主人様の実力が予想以上だったことに、喜ぶべきですかね』
ご主人様?どういう事だ?
「ご主人様ってなんだ?』
「パープルさんを、固金さんの奴隷にするという話では?」
え、何それ。
マリアは、何故平然としているんだ。
『気付いていなかったのですか?負けた方が勝った方の奴隷になるという勝負だったんですよ』
聞いてねーよ!
『ペナルティーなので、拒否権は有りませんよ』
「まてまてまてまて、奴隷とか困るから!」
どうにかして、無かったことにしてもらわないと。
そんな考えも虚しく、世界が白く染まっていく。
「ふふふ、楽しみですねー♡」
何が!?
天然の考えが全然解らねー!
☆
視界が広がると、オープンカフェ近くの大時計の前にいた。
「戻って来たのか」
すぐ隣には、マリアが居る。
「パープルさん、居ませんね」
「え、ああ・・うん」
マリア、お前は本当にそれでいいのか?
す、好きな男に奴隷が出来るんだぞ?
「アレ?」
不思議そうに首をかしげるマリアの視線を追う。
その先に居たのは、人間離れした美貌を持つ少女。
『パープル改め、ルーザです。末永く宜しくお願いします♡』
開いた口が塞がらない。
彼女の容姿が、どう見てもエルフそのものだったからだ。




