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シャスティング 犠牲になるのは私を愛してくれた人?  作者: 魔神スピリット
第一章

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第10話 メダル

 二度目のキスの後、暫く頭がボウッとしていた。

 唇の感触が忘れられず、頭の中で何度も反芻している。

 

 幸せだ。


 顔を見れば、マリアも同じ想いでいることが分かる。

 疑う必要性なんてまるで無かった。


 いつの間にか三時間経ったようで、呼び出しの放送が流れ、俺達はシャスティングのバトルフィールドへと向かった。



           ★



 さっきは気付かなかったが、バトルフィールドが以前とは変化していた。

 直径十メートルの円形の穴で、サイコロの目のように五本の柱が建っている。

 柱の太さは、直径六十センチ。

 あの柱は、空の駒の牽制になるだけでなく、下は潜水の能力で通ることは出来ない。

 更に視界の妨げになるので、駒の視覚と常時リンクさせなければならない。

 人間は、視覚から多くの情報を読み取っているため、複数の視点を持つのは辛いのだが、仕方ない。


 前回よりも難易度が上がっている。


 だが、このフィールドのおかげで敵の出方を予想出来る。

 あの障害物(はしら)を最も生かせるのは陸の駒だ。

 俺が青のカードを使うことは知っている筈だから、もし陸の駒を主力とするなら、高確率で青のカードを使ってくる。

 

 駒への制約が多いこのバトルフィールドで、青のカードに対し強化の赤のカードでは分が悪い。

 緑のカードを使うのであれば、防御一辺倒からのカウンター狙いと言うことになるが、トリッキーな青のカードに対して守勢に回れば不利だと分かっているはずだ。

 

 何よりメダルの存在が速攻を狙いやすくしている。

 メダルによる駒の交換は、自分陣地の自分の駒にしか使えないため、使用してくる確率は非常に低いと考えられる。

 その為、メダルを消費して速攻でカードを使用してくる可能性が高い。


 武器も取り回しのし易い物を選ぶだろうな。


 陣地は前回同様、綺麗に分かれていた。


『セッティング。』


 パープルが現れ、早速駒を配置した。

 プレシャスの陣地の前に十本の湾刀を装備した(たこ)

 蛸の前にクレイモアを装備した(つばめ)

 その左右斜め前に、日本刀を装備した(ひょう)(とら)の駒。


 予想よりも厄介そうだ。

 駒の属性がここまでバラバラとは思わなかった。


「セッティング」

「スタンバイ」


 マリアが麗しの騎士となってバトルフィールドに舞い降りる。

 俺の駒は、以前と同じ陣形にグレーの駒であった(からす)を俺から見て左側の陣地の境に配置した。

 烏の駒はヤタと名付け、カラーリングは通常のブラックに戻した。

 新たに作成した駒は予備に回す。


『「カード展開」』


 互いにカードを展開する。

 向こうが展開したのは、予想通り青のカードだった。

 予想通りって事は、パープルには最低でも俺と同レベルの戦術眼があると言うことになる。


『スタンバイ』


 パープルと全く同じ姿のプレシャス駒が現れる。

 何故か、武器を持っていなかった。


「どういうつもりだ」


 グレーは、槍を装備していた。

 パープルが武器を持っていないのは不自然だ。


『私し本来の武器は使用を禁止されてしまったので、今回は手ぶらで良いかと』


 本来の武器?

 どちらにせよ、それだけ自信があるということか。


『さあ、早く始めましょう』

『「ディード」』


 前回と同じく、黒煙が現れ落下する。

 炎が弾けて、シャスティングが始まった。



『メダルを使用!ワープ!』



 予想していたとはいえ、いきなり使ってきたか!

 ワープで消えたのは、大剣を装備した燕の駒。

 敵陣地からこちらの陣地に現れた燕は、ガロンの甲大剣とファルのエストックで、あっという間に切り刻まれて、光となった。


『ガアアアアアアアアーーー!!』


 パープルの悲鳴が響き渡る。


『メダルを使用!爆散!!』


 ”爆散”は、自身の駒が光となってから消えるまでの間(二秒

) に使用可能で、光を爆発に変えるカードだ。

 


 ドオオンンンンン



 爆発の近くに居たガロンとファルが被害を受ける。

 

「グウウウウア!」


 ガロンの左腕に幾つもひび割れが生まれ、ファルは今にも崩壊しそうなほど全身がボロボロだ。

 こちらが苦痛で苦しんでいる間に、パープルは、陸の駒二体を前進させる。


 これじゃあ、グレーの時と同じだ。

 駒を破壊して優位に立ったのに、苦痛に関しては俺だけが感じている。

 苦痛は、思考を阻害する。

 駒は破壊するより傷付けるだけの方が、有利になる場合もある。


 パープルの戦術は、賞賛を禁じ得ない。

 速攻で駒一体とメダルを全て消費してでもこちらに痛手を与えようとした。

 おそらく、俺がワープの位置を割り出し返り討ちにするのを予想した上で仕掛けてきたのだろう。

 ”爆散”の効果は、良くて駒一帯を道連れに出来るという物だ。

 だが結果は、駒一体を事実上の戦闘不能にし、更に一体を半壊状態にし、俺の全身に幾つも抉られたような痛みを残すというものだ。

 代わりにメダルを全て消費したが、こちらが体勢を整える前に、二体の陸の駒が攻勢にでる。


 畳み掛けなければ自身が負けると判っているのだろう。

 攻守が逆転すれば、メダルを残している俺が圧倒的に有利だからな。

 だが、俺はそんなに甘くはない。




●●●




 さすが、私が見込んだお人。

 ワープ先を予想していた。

 

 視界を遮る柱。

 ワープした駒の特性。

 使用したタイミング。

 おのずと答えが解るようにしむけましたが、駒二体で止めに入った所を見ると読み切れた訳ではないようですね。

 ”爆散”を使用すると気付いていれば、犠牲にする駒は一体に絞る筈ですから。


 それにしても、陸、空、海の駒を同時にあそこまで操れるとは。

 あの方は、間違いなくあのスキルを持っている。

 プレーヤーとしては、喉から手が出るほど欲しいスキルを。

 やはり、あの方しかいない。

 さあ、固金様、貴方の力をもっと見せて下さい!


 ・・・狼と鷲の駒を、柱の陰に隠した?

 メダルによる駒の交換が狙いでしょうね。

 果たして何の駒かしら?

 予備の駒は、おそらくは陸の駒でしょうが・・・


 柱の陰から光が漏れる。

 光が発生したのは、鷲が居た方。


 もうすぐ私の陸駒が、敵の駒と接触する。

 時間も、時期に三十秒。

 ここは、勝負に出ましょうか。


『ビーストダウン』


 ”ビーストダウン”は、敵の陸の駒全ての動きを三秒間止める効果があります。

 緑のカードには、これの上位互換と言えるカードが在りますが、あちらはデメリットが大きいんですよね。


 視覚を陸駒と共有して、カードの効果が切れる前に、動けない駒を半壊させる。

 半壊に留めるのは、複数の駒の激痛に耐えられず気絶、しなくてもまともに駒を操作出来なくなるため、破壊するよりも都合が良いからです。


 固金様が苦しむ姿は、きっと可愛いんだろうな~~~。


「ドーディ」

『ゲフッ!?』


 固金様の新しい陸駒が居ると思っていた場所に居たのは、槍を持った烏の駒。

 手に持っていた槍に、豹の駒の胸が貫かれていた。

 槍を装備しているということは、元グレーの駒。

 さっきまで離れた場所に居たのに、どうして?


 しかも、狼の駒とのリンクを解除した?

 一度解除すれば、今回のゲームでは二度と使用出来ないのに。


「ようやく痛みが無くなった」


 まさか、そんな事の為に?

 いえ、痛みから逃れる為だけに駒を捨てるような方では無いはず。


「サクリファイスパワー」


 そういう事ですか!

 カードの使用条件を満たすために!!


 ですが!そのカードの効果時間は二十秒。

 それまでプレシャス駒(わたし)に近付けさせなければ良い話し。


『何故!?』


 プレシャス駒(わたし)を守る最後の壁として配置した蛸の駒クラコに、飛び掛かって来た駒が居ました。

 その駒は、陸駒のように高速で地を駆ける鳥人の駒でした。


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