プロローグ
目の前で起きているこの光景は、一体何なのだろう。
僕はファンタジーゲームに出てくるような鎧を着て、剣を持って、目の前の闘いを見ている。
違う!アレはもう、闘いなんかじゃ無い!ただのイジメだ!!
僕を守るはずの狼男が、鳥人間に槍で穴だらけにされていく。
とっくに、鯨男と、鷲男は倒されちゃった。
あいつは一体も倒されてないのに、ズルい!
父さんの苦しそうな声が聞こえる。
そうだ、あいつを倒さないと父さんが・・・。
気付いたら鳥人間に飛び掛かっていた。
「コノヤロー!!」
ガインンンンン!
僕の剣は、簡単に槍ではじかれて、鳥人間に奪われて・・・
ドスリと身体の中から音がした気がした。
内側から痛いのが近付いてくると、別の痛みを感じた。
何度も何度も身体の中からドス、ドス、ドス、という音が聞こえる。
身体のどこに痛くない場所があるのか分からないよ。
「止めてくれ!もう、降参するから!私の負けで良いから!だから!・・・」
・・・父さんの・・・声が・・・する・・。
『止めねー~よ!バー~~~か!黙って息子が穴だらけになるのを見ていろ!』
僕が、僕があんなものを拾わなければ、こんなことにはならなかったのに。
ごめん、ごめんなさい・・・。
「ごめんなさい、父さん・・・」
・・・・・・また、あの夢か。
十一年前にあった本当の出来事。
「・・・学校に行かないと」
・・・あのゲームに、いまだに囚われている。
この十一年、あのゲームに勝つためだけに生きてきた。
もう二度と、あのゲーム・・・《シャスティング》に関わる事は無いかもしれないけど、もし、もう一度チャンスが貰えるのなら、あの男を・・・あの男を必ず殺してやる!!!
登校するために、アパートを出る。
俺は気付いていなかった。
今日という日が、俺にとって運命の日になるということに。